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『問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい』のあらすじと感想について

小説

こんにちは!しょーてぃーです!

今回は、早見和真さんの

『問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい』について紹介をしていきます!

 

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『問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい』について 

本書の概要

本書はひとことで言うと

中学受験をきっかけにバラバラな家族が再生する物語です。

 

本書をオススメしたい人

・家族をテーマにした物語が読みたい人

・中学受験や思春期の子どもの成長に関心がある人

・読後に心が温まる感動作を求めている人

 

小学6年生の長谷川十和は、家族の幸せの形がわかりません。

 

明るい母、優しい父、可愛い妹に囲まれて

一見恵まれた家庭にいるのに、なぜか心が荒んでしまいます。

 

苛立つ十和に対し、母は半ば強引に中学受験を決めてしまい、

十和が胸の内を明かせるのはLINEで繋がる「ある人」だけでした。

 

そんな中、家庭から逃げ出したい十和は、

母と祖母がかつて憧れた大阪の私立女子校を受験し祖母の家に行こうと決意します。

 

家族4人が離れて暮らすことになるため父は猛反対しますが、

ある条件付きで十和の希望を受け入れることになります。

 

こうして始まった中学受験への挑戦を通して、

バラバラになりかけた家族は少しずつ変わり始めます。

 

本作は、中学受験を通じて家族の成長を描く感動作です。

 

『問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい』のあらすじ

あらすじの概要

小学6年生の十和は、家族の幸せの形がわからない。楽しい母、やさしい父、かわいい妹。それなのに、どうして心がこんなに荒むのか。苛立つ十和に対して、母はなかば強引に中学受験を決めてしまう。このわだかまる気持ちをぶつけられるのは、LINEで繋がる「あの人」だけだ―。ここから逃げ出したい。その思いは大阪で一人暮らす祖母へと向かい、十和は大阪の私立中学に進む決意をする。4人が離れて暮らすことに父は反対するが、あることを条件に十和の希望を受け入れるのだった。

問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい  より

 

中学受験がつないだ家族の絆

長谷川家の長女・十和は、小学3年生の頃からすでに反抗期に突入し、

母親と日々言い争いを繰り返していました。

 

ある日、家族での外出を拒んだ十和さんに対し、

母親は「じゃあ中学受験をするなら家族と出かけなくていい」と提案します。

 

十和さんは家族よりも塾を選びましたが、目指す学校もなく、

勉強へのやる気もないまま時間が過ぎていきました。

 

実際、入塾後も母親は成績に関心を示さず、

「受験したくなければしなくてもいい」とまで言い、

十和にはなぜ母親が受験を勧めたのか分かりませんでした。

 

それでも塾通いを続けられた理由の一つは、同じ塾で出会った親友・野口の存在でした。

 

学校は違っても入塾のタイミングが同じだった二人は、

テスト結果によるクラス替えでも奇跡的に毎回同じクラスに進級していました。

 

さらに、野口も十和と同じく受験に身が入らず、家族との関係も良好ではなかったため、

二人は特別な連帯感で結ばれていました。

 

また、十和には募る苛立ちをぶつけられるLINE上の相談相手がいました。

 

両親にも野口さんにも言えない本音を明かせる「ある人」の存在が、

十和の心の支えになっていました。

 

やがて小学6年生になり、周囲の受験ムードが高まるにつれて、

十和の心にも小さな焦りが生まれてきます。

 

そんな中、十和のやる気スイッチが入る出来事が起きます。

 

そのきっかけの一つは、母方の祖母の存在でした。

 

大阪で一人暮らしをする祖母が最近「寂しい」と漏らすようになり、

大のおばあちゃん子である十和は心配していました。

 

ちょうど家庭の雰囲気も最悪だったため、

「大阪の中学校に合格して祖母の家から通えば、家族から離れられるし祖母も喜ぶはず」と

考えるようになります。

 

さらに、大阪の名門・星蘭女学院が祖母と母親のかつての憧れの学校だったと知り、

十和は見学に赴いて「私が仇討ちしてやる」と闘志を燃やすのでした。

 

十和が「大阪の女子校を受験したい」と切り出すと、もちろん両親は猛反対しました。

 

しかし、これまで見たことがないほどに真剣に勉強に取り組む姿を見た両親は、

最終的に受験を許可します。

 

その代わりに、母親からは「大阪で一緒に暮らす祖母本人の許可を得ること」、

父親からは「勉強は必ず父と二人三脚で行うこと」

「東京の学校も受験すること(父の母校である啓愛大附属中を受けること)」という

3つの条件が提示されました。

 

こうして十和は祖母にも頭を下げ、自宅で父親と二人三脚での受験勉強が始まります。

 

最初は鬱陶しく思えていた父親との学習も、

日々向き合っていくうちに十和の心境に変化が生まれます。

 

父の悟は驚くほど優しく忍耐強く、娘を決して否定せず、

体調が悪くても笑顔で寄り添ってくれます。

 

そんな父親に対して、十和は申し訳なさと感謝を覚え、

「こんなによいお父さんなのに、なぜ自分は苛立ってしまうのか」と自己嫌悪を深めていきました。

 

そして、「せめて結果を出して恩返ししよう」と心に誓い、

ますます勉強に励むようになります。

 

やがてさらなる試練が訪れます。

それは仲の良かった塾の女子が経済的理由で退塾し、独学で受験を目指すことになったことです。

 

ある日、彼女が書店で参考書を万引きしようとする場面に遭遇し、

「恵まれたあんた達が努力もしないで良い学校に行くのはずるい」と非難されます。

 

その言葉に胸を突かれた十和は、自分の恵まれた環境を改めて実感します。

 

さらに野口からも「長谷川と同じ学校を受けない」と告げられ、

彼女もまた離れて一人で頑張る決意を固めていたのでした。

 

塾講師のキノッピーから「今は自分のことだけ考えろ」と助言された十和は、

他人に流されずに自分の道を歩もうと心を決め、これまで以上に努力を重ねていきます。

 

そして受験直前、読者にはある真実が明かされます。

 

それは、父の悟が実の父親ではなかったという事実でした。

十和が密かにLINEで連絡を取り合っていた「ある人」とは、実の父親だったのです。

 

優しい継父である悟さんにどこか距離を置いてしまっていたのは、

実父の存在が心の奥底に影響していたからでした。

 

いよいよ迎えた受験本番。十和は父と二人三脚で積み上げた努力を

すべて出し切り、合格発表の日を迎えます。

 

結果は見事合格。家族みんなで喜びを分かち合い、

十和は「バラバラになった家族が一つになった」と実感します。

 

同時に、教育熱心ではなかった母親がなぜ自分に受験をさせたのか、

その本当の理由にも気づきます。

 

それは、中学受験という試練を通して、家族を再生させることだったのです。

 

しかし志望校合格の喜びの裏で、十和には葛藤がありました。

夢が叶えば、そのまま家族と離れ離れになってしまうからです。

 

悩んだ末に、祖母に少し後ろめたさを感じながらも、

何より今得た家族の絆を守りたいと願います。

 

最終的に、十和は大阪ではなく東京での進学を選び、

父の母校である啓愛大附属中に入学することを決めました。

 

ただし、祖母も東京に来て5人で暮らすこととなり

長谷川家は新しい生活をスタートさせるのです。

 

なお、タイトルにもなっている「問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい」とは、

物語の序盤で十和が受けた国語のテスト問題に由来しています。

 

明確な正解のないこの問いに対して、十和は自分なりの答えを見つけ出します。

 

『問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい』の感想

中学受験がつないだ家族の幸せについて

読み終えたとき、胸の中にぽっと温かい灯火がともるような余韻が残りました。

 

反抗期真っ只中だった十和が少しずつ素直になり、

家族と心を通わせていく過程に、何度も胸が熱くなりました。

 

特に終盤、悟が十和に「十和、僕を父親にさせてくれてありがとう」と

伝える場面では、思わず感動してしまいました。

 

十和にとって悟は血の繋がらない父親ですが、

それでも彼女の成長を信じ、寄り添い続けたその愛情の深さに心打たれます。

 

本作では、母娘の衝突や父娘のぎこちない距離感など、

家族ならではのリアルな姿が丁寧に描かれています。

 

十和が苛立つと家の空気がギクシャクし、妹が気の毒になる場面もありましたが、

それだけ家族という存在は互いに影響し合うものなのだと感じました。

 

序盤の十和は「親にも周りの大人にもわかってもらえない」という不満でいっぱいですが、

物語が進むにつれて、実は自分がたくさん支えられていたことに気づいていきます。

 

口うるさいだけと思っていた母が陰ながら娘を想っていたこと、

うっとうしく思えた父が誰より自分の味方になってくれていたこと。

さらに塾のキノッピー先生や友人たちとの関わりを通じて、

十和は徐々に「人に頼ること」や「本音を打ち明けること」を学んでいきます。

 

また、十和とは対照的に厳しい環境でも必死に夢を追う同級生の存在が、

十和に大きな刺激を与える場面も印象的でした。

 

塾に通えなくなった彼女が書店で参考書を万引きしようとするシーンでは、

その切実さに胸が締め付けられます。

 

彼女の「たいして努力もしないのに良い学校に行けるなんてズルい」という叫びは

十和だけでなく読む側にも突き刺さり、自分の恵まれた環境への感謝を改めて考えさせられました。

 

一方で塾講師のキノッピー先生は一見お調子者ながら、

誰よりも子どもの本質を見抜く名教師です。

 

要所でかける言葉が十和の背中を押し、そのユニークな人柄が物語に明るさを添えてくれました。

 

コミカルなやり取りにクスリとしつつも、

最後には「流されやすくても本気になれば大丈夫」という彼の言葉通り、

十和が自分の道を走り抜ける展開に爽快感を覚えます。

 

また、物語の鍵となる中学受験は、決して学歴のための試練として描かれてはいません。

 

むしろ登場する大人たちは

「中学受験で人生は決まらない」「受験よりもっと大変なことが人生にはある」と教え、

受験勉強を通して得た努力の経験こそがこの先の財産になると伝えてくれます。

 

その言葉どおり、半年間の猛勉強をやり遂げた十和は、

結果以上に大きな自信と成長を手にしていました。

 

始めは親に乗せられて渋々だった受験も、

最後には「自分のための挑戦」へと変わっていく十和の姿がまぶしく映りました。

 

タイトルにもある「家族の幸せの形」という問いについても考えさせられます。

 

作中で十和が出会う国語の設問は結局、

明確な正解がないまま終わりますが、それこそが本作のメッセージです。

 

作中の小説の作者が「家族の幸せの形に言及した覚えもない」

「小説なんてどう読んだっていい」と語るシーンがあり、

人それぞれが感じ取ったことこそ答えだと示唆されます。

 

十和は悩み抜いた末に自分なりの答えを見つけましたが、

その答えは決して一つではなく、読者に対しても「あなたならどう答える?」と問いかけてきます。

 

そして、十和が最終的に選んだ進路には、

まさに彼女自身が見出した『家族の幸せの形』が体現されているように感じました。

 

最後に

ここまで本書について紹介してきました。

 

中学受験を題材に、家族の絆と幸せの形を優しく問いかける本作は

反抗期の子を持つ親御さんはもちろん、かつて思春期だった全ての人に響く物語だと感じました。

 

本書が気になる方は、是非手に取ってみてください!

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