こんにちは!しょーてぃーです!
今回は、燃え殻さんの
『この味もまたいつか恋しくなる』について紹介をしていきます!
『この味もまたいつか恋しくなる』について
本書の概要
本書はひとことで言うと
食と記憶が織りなす、温かなエッセイ集です。
本書をオススメしたい人
・ある料理やお酒を口にすると「あの日、あの人」を思い出す経験がある人
・日常の何気ないひとコマに宿る思い出を噛みしめたい人
・家族や友人との記憶に心を動かされる人
本作は、人気作家である燃え殻氏による長編エッセイ集です。
料理を口にしたとき、つい思い出してしまう「ある日、あの人」の記憶を綴った一冊で、
さまざまなメニューにまつわる心温まるエピソードが集められています。
作中で「恋しくなる味とは必ずしも美食とは限らない」ことが描かれています。
例えば、複雑な事情を抱えた彼女との別れの朝食に食べたシーフードドリアの思い出や、
遠く離れた友人と電話越しにジャンボモナカをほおばりながら
「有名になりたかったな」と語り合う後悔の会話など、心に残る場面が描かれます。
「週刊女性」で約1年間連載されていたエッセイに
書き下ろしを加えたものでが一冊にまとめられており
普段の生活の中に潜む小さな出来事を通じて、
誰もが一度は感じたことのあるノスタルジーと切なさをあたたかく見つめる作品です。
『この味もまたいつか恋しくなる』のあらすじ
あらすじの概要
ある料理やお酒を口にするとき、ふと思い出してしまう〝あの日、あの人〟を描く。
人気作家・燃え殻氏初の長編エッセイ集。
彼女との最後の朝食となったシーフードドリアと白ワイン/「王貞治のサインがある店はデザートが美味しい」と豪語する先輩/ジャンボモナカを食べながら「有名になりたかったな」と言った友人/冷えてチーズが固まったピザトーストを片手に、初めて見た母の涙……
ある料理を口にすると、どうしようもなく思い出してしまう
あの日、あの人を描く。
グルメじゃない僕にとって、恋しくなる味のお話。
料理によって蘇る数々の記憶を描いたエッセイ
それぞれのエッセイは燃え殻さんの体験が描かれております。
「最後の朝食」として彼女とともに食べたシーフードドリアの記憶では
複雑な事情を抱え別れを告げたその日を、後々まで心に残る鮮烈な体験でした。
後悔が残る思い出として、SNSで繋がった有名人との電話越しの会話を振り返ります。
二人はジャンボモナカのアイスを同時に食べながら
「死にたい」「辛い」「有名になりたかったな」とお互いの後悔を吐露し、
黙々とアイスを頬ばったあの時間が忘れられません。
また、一緒にメニューを選ぶ女性客が
「シェフの気まぐれサラダ」や「お任せメニュー」がどうしても頼めない性格で、
堅実な相手とだけ人生を歩むことを決めていたエピソードや
の男性が「きれいに騙されたい」と呟きつつ、
手作り弁当を作ってくれる風俗嬢に会いに行く姿も描かれます。
日常の些細な会話や出来事がそれぞれ意味深く感じられ、
読み進めるうちにまるで短編小説を味わっているかのような気持ちになります。
料理初心者だった父親への愛情は初めて挑戦したチャーハンや
独自の価値観を持つ女友達を思い起こさせる東京銘菓(『東京ばな奈』など)のお話もあり、
それぞれの章は食事を中心にした人生の断片となっています。
さらに、単なる食べ物の紹介に留まらず、
出会った人々の人生哲学、子ども時代の思い出など、多様な側面を自由に行き来します。
たとえば、簡素なインスタント麺や老舗の味噌ラーメンから、
登場する料理は幅広く、それぞれにエピソードが込められています。
総じて本作は、過去のある日、誰かと一緒に食べた一品が
「恋しい味」へと変わっていく過程を、淡く切なく描いたエッセイ集です。
読む者は、いくつもの物語と重なる味わいを通して、
「あの味」が自分自身の思い出にそっと紐づいていく感覚を味わうことができます。
『この味もまたいつか恋しくなる』の感想
ページの向こうに漂う、あの人とあの料理
本作は、読むほどに静かな感動が沁みてくる作品です。
燃え殻さんの語り口は基本的に飾り気がなく、
まるで身近な友人の日常を覗き見しているような親しみやすさがあります。
その素朴な表現だからこそ、一つひとつのエピソードに登場する
食べ物やシーンが鮮明に心に残ります。
また、作中の「料理の描写」が特に心を引き寄せまます。
テレビプロデューサーの鈴木おさむさんが帯コメントで評しているように、
『目で食べる料理』の描写が、心の奥に閉まっていた思い出を呼び起こし、
「切なさという味」に変えてくれるのです。
そして読むほどにページをめくる手が止まらなくなり、
まるで中毒のように続きを読みたくなってしまいます。
また、本作の魅力は食べ物だけでなく、人間関係や人生観に広がっている点です。
食べ物を軸にしながらも、旅先での出来事や出会った人々の考え方、
作者自身の子ども時代といった様々な情景が折り重なっており、
多角的に楽しめる構成になっています。
料理が不慣れな父が作ったチャーハンのエピソードや、
『東京ばな奈』に執着する知人の話などは、単なる食レポではなく、
家族や知人への愛情がにじみ出ていて暖かい気持ちになります。
使われている食材や料理のジャンルも、インスタント食品から
チェーン店メニュー、地方の郷土料理まで幅広く、
読者の多くが「自分も似たような思い出がある」と共感できる点も好印象です。
スタイル的には、著者ならではの独特のユーモアと優しさが散りばめられており、
全体的にとても読みやすく心地よいです。
余計な誇張はなく、静かに感情が高まっていく語りは
『それでも日々はつづくから』など他のエッセイ作品にも通じるものがあります。
燃え殻さんの優しい語り口には、読むほどに癒される不思議な力があるように感じました。
一編ごとが短いエッセイ形式なので、隙間時間に少しずつ読める点もありがたく、
忙しい日常にほっと一息つける時間をくれます。
最後に
ここまで本書について紹介してきました。
食卓に並ぶひと皿の物語を通じて過去と向き合う本作は、
どこか懐かしくも温かな余韻を残してくれます。
大切な人との思い出を噛みしめたい人はもちろん、
忙しさの合間にほっと心を解きほぐす読書体験を求める
すべての人におすすめできる1冊です。
本書が気になる方は、是非手に取ってみてください!
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