こんにちは!しょーてぃーです!
今回は、早見和真さんの
『普通に青い東京の空を見上げた』について紹介をしていきます!
『普通に青い東京の空を見上げた』について
この記事でわかること
- 6編連作の全体像と、舞台(東京の地名)が持つ意味
- “逃げたいのに逃げられない”息苦しさがどう描かれるか
- 読後に点が線になる「ゆるい接続」の味わい方
本書の概要
『普通に青い東京の空を見上げた』は、東京で暮らす「27歳」前後の男女を軸にした連作短編集(全6編)です。舞台は新橋・北新宿・成城・十条・二子玉川・碑文谷で、仕事・恋愛・結婚・劣等感といった現実が、生活の転換点として繰り返し問われます。なお本書は、講談社刊『東京ドーン』からの改題であることが明記されています。
本書をオススメしたい人
- 仕事は「ある」けれど、なぜか満たされない感覚を抱えている人
- 結婚や同棲、将来設計を前にして、選択肢が狭まっていく怖さがある人
- 短編集が好きで、人物が“ゆるくつながる”構成に惹かれる人
正直、あまり向いていない人
- 登場人物がスパッと成功してスッキリ、みたいな物語が読みたい人
- 固有名や関係性を一読で全部把握したい人(パズルっぽさがあります)
- 登場人物の迷いが「贅沢」に見えてしまうタイプの人
『普通に青い東京の空を見上げた』のあらすじ
あらすじ(ネタバレ控えめ・前半)
本書は6編からなる連作短編集で、各編は一人称(「僕」「ボク」「私」など)で語られます。導入になる「新橋ランナウェイ」では、二流大学の三流学部を卒業した「僕」が予期せず一流企業に入社するものの、時代遅れの激務で追い詰められていきます。周囲から「逃げたければ逃げればいい」と言われながら、恋人の妊娠が判明し、退職の選択を“引っ込めざるを得ない”状況に追い込まれる、という始まりです。
そこから舞台は北新宿へ移り、正社員や結婚を意識しつつ不安定な現状でもがく「ボク」が描かれます。成城では、条件の良い彼氏がいても結婚に踏み込めない関係に不安を募らせる「私」が登場し、現状が少しずつ崩れ始める気配が示されます。十条・二子玉川・碑文谷へ進むにつれ、挫折や価値観の変化、別れと執着といったテーマが別角度から重なり、人物が“ゆるく”交差していく構成だと紹介されています。
この作品はどんな読書体験か
一話ずつ読むと「それぞれの人生のしんどさ」が独立して刺さってきて、通して読むと「あ、ここでつながるんだ」と点が線になるタイプの短編集です。正直、途中で関係性が見えにくい瞬間もあると思います。けれど、その“わかりにくさ”ごと東京っぽいというか、同じ街ですれ違ってる感じが残るんですよね。あなたは短編集、単話派ですか、それとも通読で味が出る派ですか。
『普通に青い東京の空を見上げた』の感想
感想①:テーマ
出版社公式の惹句にある「自分の人生は自分が主役。本当に?」という問いが、この作品の芯だと思います。逃げたいのに逃げられない、でも逃げないと壊れそう、みたいな息苦しさが、仕事・恋愛・結婚・劣等感として生活の現実に落ちてくる。しかもそれが、誰にでも起きうる“普通”として描かれているのが効きます。派手な逆転じゃなくて、「普通に青い空」を見上げられる地点へ戻ること自体が回復なのかもしれない、と感じました。
感想②:人物(語り)
一人称で語られるぶん、語り手の中の言い訳っぽさや焦りが、近い距離で伝わってくる印象です。語り手が「僕」「ボク」「私」「俺」「わたし」「ぼく」と変わり、それぞれが“子どもでも大人でもない”揺れを抱えています。固有名が前面に出にくい構成は、没入しやすい反面、人物関係の把握が難しくなる可能性もあると感じました。なので、最初から完璧に整理しようとせず、「今の自分に刺さる語り手」を探す読み方が合います。
感想③:読後感
読後に残るのは、スカッとした勝利というより、「ああ、みんなそれぞれ必死なんだな」という同伴の温度です。説教にも断罪にも振れず、当事者の体温で描こうとしている距離感が、この作品の強みだと思います。終わり方も、すべてが整理されるより「その後が気になる」余韻型だと言われていて、そこが好き嫌いの分かれ目になりそうです。個人的には、余韻が残る作品のほうが、日常でふと効いてくるので好きだったりします。
この作品が投げかける問い
「逃げる/踏ん張る」の二択だけで、自分の人生を決めてしまっていないか。誰かの“普通”に合わせるほど、自分の輪郭が薄くなっていないか。もし今の自分が主役だと言い切れないなら、何を少しだけ変えたら、空を見上げる余白が戻るんだろう。あなたなら、どこから手をつけますか。
最後に
『普通に青い東京の空を見上げた』は、東京で暮らす27歳前後の男女の“ままならなさ”を、6編の連作で立体的に照らす短編集です。仕事・恋愛・結婚・劣等感という現実の重さを、説教ではなく同じ地平の息苦しさとして描く距離感が、静かに沁みると思います。
群像劇や“ゆるくつながる”短編集が好きな方は、他の群像劇・短編集の記事もぜひ読んでみてください。
気になった方は、東京の地名が出てくる夜にでも手に取って、6つの人生の交差をゆっくり味わってみてください。

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