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『成瀬は都を駆け抜ける』のあらすじと感想について

小説

こんにちは!しょーてぃーです!

今回は、宮島未奈さんの

『成瀬は都を駆け抜ける』について紹介をしていきます!

 

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『成瀬は都を駆け抜ける』について 

本書の概要

本書はひとことで言うと

唯一無二のヒロインが京都を舞台に大活躍する1冊です。

 

本書をオススメしたい人

  • 青春ドラマを楽しみたい人
  • 京都や滋賀を舞台にした現実味あふれる物語に魅力を感じる人
  • ユニークでパワフルな女性主人公から元気をもらいたい人

 

本書は、成瀬あかりを主人公とする

成瀬シリーズ連作短編集の第3作にして完結編です。

 

高校卒業後に京都大学理学部へ進学した成瀬あかりが、

地元・滋賀県大津市と新天地・京都市を主な舞台に、

大学1年に経験する出来事が6つの短編で描かれています。

 

幼い頃から突拍子もない大目標を掲げては実行に移す成瀬は、

その型破りでまっすぐな生き様が幅広い読者の共感を呼び、

令和最強のヒロインとも称される存在です。

 

本作で彼女は「京都を極める」ことを新たな目標に掲げ、

大学生活で出会う新たな仲間たちと共に様々な挑戦を繰り広げていきます。

 

その奔放な活躍を通じ、シリーズ集大成にふさわしい

最高のハッピーエンドへと突き進んでいく物語です。

 

実在の土地・施設や現実の出来事を積極的に取り入れた臨場感あふれる物語世界と、

笑いと感動が交錯する青春ドラマとして、

本シリーズは累計180万部を超える人気を博し、多くの読者に愛されています。

 

『成瀬は都を駆け抜ける』のあらすじ

あらすじの概要

高校を卒業し、晴れて京大生となった成瀬あかり。一世一代の恋に破れた同級生、達磨研究会なるサークル、簿記YouTuber……。新たな仲間たちと出会った成瀬の次なる目標は“京都を極める”! 一方、東京の大学へ進学した島崎みゆきのもとには成瀬から突然ある知らせが……!? 最高の主人公に訪れる、究極のハッピーエンドを見届けよ!

成瀬は都を駆け抜ける より

 

成瀬あかりは滋賀県大津市出身の女性。

高校時代に数々の伝説を残した彼女は、膳所高校を卒業後、

京都大学理学部に晴れて合格し進学します。

 

地元愛あふれる成瀬は大学入学と同時に

1年間任期の「びわ湖大津観光大使」にも就任し、

「京都を極める」ことを新たな目標に掲げて大学生活をスタートさせました。

 

シリーズ完結編である本書には、成瀬が大学1年生として京都と滋賀で駆け回った

一年間のエピソードが全6編収録されています。

 

やすらぎハムエッグ

神奈川の田舎の高校から京大理学部に合格した坪井さくらは、

幼なじみで12年間想いを寄せていた同級生・早田が

自分とは別に東京大学へ進学してしまい、

一緒に京大に通うという夢が断たれたことで虚無感に襲われます。

 

早田のいない入学式に居たたまれなくなったさくらは

会場から逃げ出しますが、焦って駆け出した拍子に転倒してしまいます。

 

倒れたさくらに手を差し伸べ起こしてくれたのは、

振袖姿で入学式に現れていた成瀬あかりでした。

 

成瀬に支えられたさくらは、その不思議な縁から成瀬と知り合いになります。

 

失意のさくらにとって、成瀬との出会いと何気ない会話は

心を解きほぐす大きなきっかけとなりました。

 

タイトルにあるハムエッグになぞらえ、

落ち込む人の心を温めるような家庭的な料理の存在も描かれ、

さくらは少しずつ前向きさを取り戻していきます。

 

実家が北白川

京都大学農学部に合格し、京都市左京区の北白川にある実家から通学することになった

新入生梅谷誠は、健康診断の帰りに大学構内で奇妙な光景に出会います。

 

木陰にてこたつを囲み火鍋をつつく京大2回生の男性3人組

彼らは京都大学の有志サークル「達磨研究会」でした。

 

好奇心から声をかけた誠は、

彼らが小説家・森見登美彦の作品を愛する集まりであると知り入会します。

 

しかし実態は、会長で工学部2回生の木崎輝翔のワンルーム下宿に集まって

火鍋とテレビゲーム『桃太郎電鉄』を楽しむというゆるい会でした。

 

ある日、森見作品の大ファンである木崎が

「『夜は短し歩けよ乙女』のヒロイン黒髪の乙女のような女性に出会いたい」

熱く語っているのを聞いた誠は、

キャンパスで理想の黒髪の乙女探しに協力することになります。

 

やがて誠は大学構内で、補助輪なし自転車の練習をしている成瀬あかりと、

付き添っている坪井さくらに遭遇します。

 

その異色の姿に、誠は彼女こそ木崎の求める

黒髪の乙女的存在ではないかと直感します。

 

物語はここで一気に成瀬あかりシリーズ本来の流れに合流し、

成瀬と達磨研究会の面々が出会うことで、

人と人との繋がりが広がっていく展開となります。

 

ぼきののか

日商簿記1級合格を目指す大学生YouTuber「ぼきののか」こと田中ののかは、

合格祈願の生配信のため京都市の北野天満宮を訪れます。

 

そこで偶然、参拝客に混じって滋賀県・びわ湖大津の観光PRを

熱心に行う成瀬あかりに遭遇しました。

 

自分のチャンネルの生放送中にもかかわらず、

視聴者の注目を成瀬に奪われてしまったののかは内心面白くありません。

 

さらに不運なことに、配信中に見知らぬ男性が乱入してトラブルが発生し、

恐怖を感じたののかは配信を中断して逃げ帰る羽目になります。

 

このハプニング動画がネット上で拡散され、ののかのSNSは大炎上。

 

孤立無援で途方に暮れるののかのもとに現れた成瀬は、

彼女に向かって力強く宣言します。

 

「田中、わたしはこの夏を簿記に捧げようと思うんだ」

 

かつて中学時代に「この夏を西武に捧げようと思う」と語った

成瀬あかりの名ゼリフを彷彿とさせるこの一言によって、成瀬はののかに手を差し伸べます。

 

こうして奇想天外な成瀬の提案のもと、

夏休みの限られた時間を簿記勉強に捧げるというコラボ企画が始動。

 

落ち込むののかも成瀬に巻き込まれる形で奮起し、

青春のひと夏を共に駆け抜けることになるのです。

 

そういう子なので

成瀬あかりの母親である成瀬美貴子の視点で描かれる異色の一編です。

 

ある日、美貴子は娘のあかりから「びわテレビ」(滋賀のローカル局)の情報番組

「ぐるりんワイド」に出演が決まったと知らされます。

 

地域の安全パトロールなど成瀬の地元活動が注目され、

番組スタッフの若手女性ディレクター・品川から

成瀬への密着取材のオファーが来たのです。

 

同時に品川は母・美貴子にも、

娘のこれまでの歩みを振り返るインタビュー出演を依頼してきました。

 

思いがけない機会に戸惑いつつも、

娘の晴れ舞台を応援しようと取材に協力する美貴子。

 

インタビューを通して彼女は、娘・あかりとの日々を改めて振り返っていきます。

 

5年前、中学生だった成瀬が「ぐるりんワイド」の生中継企画に熱中した際に

母親として抱いた「ある後悔」や、小学6年生の三者面談で味わった苦い思い出など、

胸の奥にしまっていた記憶が次々と蘇ります。

 

当時は理解しきれなかった娘の突飛な言動も、

今では成瀬あかりという人間の本質を表すものだったと気づき始めます。

 

インタビューの過程で、美貴子は「そういう子なので」と娘を受け入れます。

 

親愛なるあなたへ

今度の視点人物は、2年前の高校競技かるた選手権で成瀬と出会った青年西浦航一郎です。

 

高校生当時、大会会場で成瀬あかりと偶然知り合った西浦は、

それ以来スマホを持たない成瀬との間で手紙の文通を続けてきました。

 

成瀬から届く達筆な直筆の手紙は、西浦にとって特別な宝物です。

 

やがて西浦は京都の大学に進学し、

成瀬も観光大使の仕事など忙しさは増しつつもついにスマートフォンを入手します。

 

ある日、西浦の元に成瀬からLINEのQRコードを同封した手紙が届きました。

 

これで気軽に連絡が取れる、と期待したものの、

同じ京都にいながら成瀬は相変わらず多忙で、二人はなかなか直接会えずにいました。

 

季節は流れ、クリスマスムードが漂い始めた12月。

 

会えない日々に業を煮やした西浦は、

募る成瀬への想いを情熱的に綴った手紙を書き上げます。

 

しかし一夜明けて冷静になると、あまりに熱烈な文面を送ってしまったことが

恥ずかしくなり、無難な内容に書き直しました。

 

ところが誤って、出してはいけないはずの情熱的な手紙を投函してしまったのです。

 

顔から火が出る思いの西浦は、慌てて成瀬に手紙の撤回を願う連絡をし、

京都駅で手紙を返してもらうために会う約束を取り付けます。

 

琵琶湖の水は絶えずして

春休みを迎えた大学1年の終わり頃、東京で暮らす成瀬の親友島崎みゆきが、

成瀬からの一通の速達郵便を受け取るところから最終話が始まります。

 

手紙には「あたしは大津市民病院に入院している。

話したいことがあるから来てくれないか」と綴られていました。

 

突然の知らせに驚き不安を覚えた島崎は、

必要な荷物だけカバンに詰めて新幹線で東京から滋賀へ向かいます。

 

大津市民病院の個室で再会した成瀬は、

心配する島崎に対して「島崎に頼みがある」と切り出しました。

 

実は成瀬は過労気味で数日入院することになり、

翌日に控えた「びわ湖大津観光大使」としての

最後の仕事に出られなくなったというのです。

 

そこで成瀬は島崎に、自分の代理でその仕事を引き受けてほしいと頼みました。

 

島崎は親友の頼みを引き受け、翌日、京都市左京区蹴上の琵琶湖疏水記念館に出向きます。

 

成瀬の代わりに館内で滋賀県大津市の観光PRを行った後、

島崎は成瀬が用意していた段取りに従い、

蹴上船着き場から観光船「びわ湖疏水船」に乗船して

一路びわ湖のある大津港へと向かいました。

 

船上にはなんと、これまで成瀬あかりの物語を彩ってきた

数多くの登場人物たちが次々に姿を見せます。

 

成瀬に関わった人々が一堂に会する中、同時に成瀬本人も駆けつけます。

 

こうして成瀬あかりの最後の課題であった

観光大使の任務は親友と共にやり遂げられ、

京都と滋賀を繋ぐ琵琶湖疏水の上で成瀬シリーズは感動の大団円を迎えます。

 

『成瀬は都を駆け抜ける』の感想

シリーズ全体と成瀬あかりの魅力

成瀬あかりシリーズは、第1作の登場以来

その痛快なストーリーと主人公の魅力で多くの読者を掴んできました。

 

とりわけ主人公・成瀬あかりのキャラクターは際立っており、

常識にとらわれない発想と行動力、

そして底抜けに前向きな生き様が読む者に爽快感と元気を与えてくれます。

 

彼女は「200歳まで生きる」「○○を極める」といった

一見荒唐無稽な目標を次々と宣言しては、本気で行動に移す型破りな人物です。

 

しかしその根底には筋の通った信念があり、どんな大きな夢にも挑戦する姿は

「ゴールにたどり着かなくても、歩いた経験は無駄じゃない」という成瀬自身の言葉どおり、

結果よりも過程を大事に人生を楽しむことの尊さを体現しているように感じられます。

 

こうした成瀬の生き方は読後に爽やかな感動を残し、

「自分も頑張って一歩踏み出してみよう」と読む者の背中を押してくれるものがあります。

 

そして本作では、シリーズ集大成にふさわしく

物語の構成や演出にも工夫が凝らされていると感じました。

 

最大の特徴は各短編ごとに異なる視点人物を立て、

成瀬あかりという主人公を外側から描く群像劇の手法を取っている点です。

 

第1巻では成瀬の親友・島崎みゆきの目線から語られる物語が中心でしたが、

第2巻以降は成瀬と出会う様々な人物たち

(同級生、新入生、YouTuber、母親、文通相手など)の視点で物語が進みます。

 

当初、誰もが成瀬を「ちょっと変わった人物」と見ますが、

関わるうちに彼女のまっすぐな情熱に心を打たれ、いつしか魅了されてしまう

各エピソードで繰り返されるこのパターンが、本書でも心地よいリズムを生んでいました。

 

特に母親の視点で娘を見つめ直す「そういう子なので」は

タイトルの意味が明らかになった瞬間に

胸が熱くなる仕掛けがあり、巧みな構成に唸らされます。

 

また最終話では再び島崎みゆきが語り手となり、

成瀬の物語を締めくくる特別な存在として登場する構成にも

シリーズファンとして大いに満足させられました。

 

視点の選び方ひとつとっても計算し尽くされており、

各話のラストで語り手が成瀬を呼ぶ呼称が変化する演出など、

細部にまで行き届いた技巧が感じられます。

 

舞台設定と現代性、ポップカルチャーの引用

さらに本作の魅力を高めているのが

実在の固有名詞やポップカルチャーへの言及をふんだんに取り入れた臨場感です。

 

成瀬あかりシリーズでは第1作「ありがとう西武大津店」から

実在のデパート閉店や地元テレビ番組への出演など、

現実の話題が物語の核になっていました。

 

本作でも京都・滋賀の実在の地名や施設が舞台となり、

森見登美彦の小説や人気漫才コンビ、

漫画『ちはやふる』といった具体的な名詞が次々登場します。

 

現代日本に生きる等身大の若者たちの物語としてリアリティが感じられるうえ、

「自分が知っているあの場所や出来事が作品に出てくる!」という楽しさも味わえました。

 

例えば、作中では成瀬が有名人並みにネットで話題となり、

初対面の人物がその場でスマホ検索して成瀬の経歴を知るシーンがありますが、

これは2025年現在の日本を舞台にした物語ならではのリアルな描写だと感じます。

 

フィクションでありながら現実世界と地続きに思える舞台設定が、

本作の大きな魅力の一つです。

 

さらに「実家が北白川」における森見登美彦ワールドへのオマージュなど、

文学好きの読者が思わずニヤリとする遊び心も散りばめられており、

作者のサービス精神と巧みさに感心しました。

 

感情表現とテーマの収束

そして物語全体を通して、笑いとペーソスのバランスも見事だと感じます。

 

成瀬の言動に振り回される人々のエピソードは

コミカルで思わずクスリと笑える場面が多い一方、

各話のラストには胸にじんと沁みる余韻が残ります。

 

特に「親愛なるあなたへ」で西浦が誤って

熱烈な手紙を送ってしまい少し赤面するくだりや、

「琵琶湖の水は絶えずして」で成瀬が親友にだけ弱さを見せる場面など、

ユーモアの中に青春小説ならではの切なさや温かさが同居していました。

 

シリーズを通じて描かれてきた

人と人との絆、地元と新天地を結ぶ想いといったテーマが最終巻で見事に収斂し、

読後には爽やかな感動と少しの寂しさが胸に残りました。

 

誰かに影響を与え、また誰かに支えられて人は成長していくというメッセージが、

成瀬あかりというキャラクターを通じてストレートに伝わってきて、深い余韻を味わいました。

 

最後に

ここまで本書について紹介してきました。

 

シリーズ完結編となる本書の結末は、ファンにとって理想的な幕引きでした。

 

成瀬自身はもちろん、彼女と関わった人々それぞれが

自分の道を踏み出していく様子が描かれ、未来への希望を感じさせる余韻が残ります。

 

本書が気になる方は、是非手に取ってみてください!

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