こんにちは!しょーてぃーです!
今回は、原田マハさんの『すべてが円くなるように』について紹介をしていきます!
『すべてが円くなるように』を一言で表すなら
海の底でゆっくり育まれる真珠のように、人生の痛みや迷いをやさしく包み込みながら、人は少しずつ自分だけの光を見つけていく。そんな静かな再生の物語だと感じました。
原田マハさんの作品は、アートを題材にしながらも「難しい美術小説」というより、人の感情を丁寧にすくい上げてくれる印象があります。本書もまさにその空気感が強くて、読んでいるだけで呼吸がゆっくりになるような感覚がありました。
本書の概要
『すべてが円くなるように』は、真珠をテーマにした7つの短編から構成される作品集です。フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』を起点に、アムステルダム、ロンドン、シカゴ、京都、そして鳥羽へと舞台を移しながら、それぞれの人生模様が描かれていきます。
本書内の記述の範囲では、すべての物語に「真珠」が重要な意味を持っています。ただの装飾品としてではなく、誰かの記憶や人生の転機、あるいは大切な人からのエールとして静かに寄り添っているんですよね。
祖母と孫、母と娘、友人同士など、女性たちの関係性が中心になっていますが、読んでいて感じたのは「人は一人では円くなれないのかもしれない」ということでした。誰かの存在に支えられながら、少しずつ丸みを帯びていく。そんな温度感のある作品です。
本書をおすすめしたい人
- 美術や工芸など、美しいものに触れて心を整えたい人
- 人生の転換期にいて、自分の進む道に迷っている人
- 短時間で読めるけれど、深い余韻が残る作品を探している人
特に、「最近ちょっと疲れてるな」と感じている人にはかなり刺さると思います。派手な展開があるわけではないんですが、その静けさが逆に心に残るんですよね。
『すべてが円くなるように』のあらすじ
フェルメールとの約束
フェルメールの物語を書きたいと願う作家が、アムステルダムで開催された大規模なフェルメール展を訪れる物語です。入手困難だったチケットを、ホテルのコンシェルジュの厚意によって手に入れる場面がとても印象的でした。
『真珠の耳飾りの少女』と対面した瞬間の描写には、原田マハさんらしい「光」の美しさが詰まっています。芸術に触れたとき、人はもう一度前を向けるのかもしれません。
庭の朝露
母の遺品整理のため、京都の古い町家へ戻った真彌の物語です。西陣の組紐商として続いてきた家の歴史と、三世代の女性たちの記憶が静かに重なっていきます。
坪庭の朝露のように描かれる真珠の描写が本当にきれいで、読んでいて胸がじんわりしました。家族との思い出って、失ってから気づくものも多いですよね。
真夏の夜の夢
ロンドン郊外を舞台に、日本酒を世界へ届けようとする女性の挑戦が描かれます。大きな夢を抱きながらも、どこか静かで穏やかな空気が流れているのが印象的でした。
キャンドルの灯りに照らされる真珠の描写が幻想的で、「夢を受け継ぐ」というテーマが自然に伝わってきます。本書の中でも特に映像的な一編だと思います。
ユーレイカ
学生時代に出会った憧れの女性や、作家・森茉莉との邂逅を通して、「自分らしく生きること」の意味を描いた作品です。
銀座の御木本で仕立てられた「ユーレイカ」の指輪の話は、かなり印象に残りました。他人の目を気にしすぎてしまう人ほど、この物語は刺さるかもしれません。
いつか、相合傘で
シカゴへ赴任した母親と娘の関係を描く物語です。異国の寒さや孤独の中で、母娘が少しずつ互いを理解していく姿がとても温かいんですよね。
「いつか、相合傘で誰かと歩く日が来る」という母の言葉が静かに胸へ残ります。子どもの成長って、うれしい反面ちょっと寂しさもありますよね。
あの日のエール
建築を学ぶ杏樹が、祖母タマヨの生き方から勇気を受け取る物語です。才能への不安や、自分の限界への迷いがリアルに描かれていました。
特に、シャルロット・ペリアンの写真と真珠のネックレスの場面は、本書の中でも象徴的なシーンだと思います。「強さ」と「美しさ」は両立できるんだと感じさせてくれます。
海からの贈りもの
鳥羽の海を舞台に、真珠養殖と女性たちの友情を重ね合わせた最終話です。真珠ができるまでの工程が丁寧に描かれていて、人の手の温度を感じる作品でした。
長い時間をかけて育まれる真珠と、時を経ても続く友情。その重なり方が本当に美しくて、読み終えたあとに静かな余韻が残ります。
『すべてが円くなるように』を読んだ感想
真珠というモチーフがとにかく美しい
本書を読んでまず感じたのは、「真珠」という存在の奥深さでした。ダイヤモンドのような派手な輝きではなく、内側からじんわり光る感じが、本作の空気感そのものなんですよね。
しかも真珠って、本書内の説明では「異物という痛み」を抱え込みながら時間をかけて形成されます。この設定が、登場人物たちの人生と本当にきれいに重なっていました。
派手ではない。でも、だからこそ沁みる
正直に言うと、本作は大きな事件が起こるタイプの小説ではありません。どちらかというと、静かな会話や風景、記憶の積み重ねで物語が進んでいきます。
でも、その静けさが妙に心地いいんですよね。忙しい日々の中で読むと、「こういう時間を忘れてたな」と感じる人も多いんじゃないでしょうか。
女性たちの生き方がかっこいい
本書には、自立しながらも、どこか柔らかさを失わない女性たちが多く登場します。特に祖母タマヨの生き方はかなり印象的でした。
年齢を重ねることを「衰え」ではなく、「円くなること」として描いているのが素敵なんですよね。年を取るのも悪くないかも、と少し思わせてくれる作品でした。
最後に
『すべてが円くなるように』は、誰かと競い合うための物語ではありません。傷ついたり、迷ったりしながらも、自分なりの光を見つけていく人たちの物語です。
本書を読んでいると、「急がなくてもいいのかもしれない」と自然に思えてきます。今の自分のままでも、少しずつ円くなっていける。そんな安心感を与えてくれる1冊でした。

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