こんにちは!しょーてぃーです!
今回は、原田ひ香さんの
『月収』について紹介をしていきます!
『月収』について
本書の概要
本書はひとことで言うと
6つの月収が紡ぐ、幸せの方程式を探す物語です。
本書をオススメしたい人
・お金や働き方について悩んでいる人
・現代のリアルな生きづらさに共感したい人
・群像劇や多視点の物語が好きな人
本作は、月収4万円から300万円まで、
幅広い収入を得る6人の女性たちを主人公に据えた連作短編集です。
年齢も職業もまったく異なる彼女たちが、
それぞれのお金との付き合い方、働き方、人生観を描き出します。
年金暮らしの高齢女性、売れない小説家、節約に励む会社員、
パパ活で稼ぐ若者、資産家の未亡人、介護職の新人など
お金を「どう稼ぎ、どう使い、どう生きるか」をめぐって、
現代日本社会のリアルな縮図が浮かび上がります。
また本作は、単なる「稼ぐ物語」ではなく、
「生き方」そのものを静かに、力強く問いかける作品でもあります。
さまざまな価値観や葛藤が交錯する中、
読後には、お金と幸せ、働き方と人生観について考えさせられる1冊です。
『月収』のあらすじ
あらすじの概要
年金暮らしで月収四万円の六十六歳から、株や投資信託で月収三百万円ある五十二歳までが織りなす、お金をテーマにした人間ドラマ! 大ベストセラー『三千円の使いかた』と一緒に読んでほしい原田ひ香の新作が登場です。
月収 より
六人六様、月収で描かれる人生模様
本作は、月収が大きく異なる六人の女性を主人公に据えた連作短編集です。
年齢も職業も境遇も異なる彼女たちが、
それぞれ「月収」という視点からどのような生活を送り、
何を思い、何に悩むのかがリアルに描かれていきます。
月収4万円:老後のやりくりと希望
66歳の響子は、長年連れ添った夫に突然離婚を切り出され、
頼みの年金も月4万円ほどという厳しい老後に直面します。
貯金を切り崩しながら細々と暮らす日々の中、
ひょんなことから思いがけない収入源が舞い込んできます。
それは彼女にとってささやかな希望となりますが、
同時に「お金では買えない大切なもの」に気づくきっかけともなっていきます。
月収8万円:夢と現実のはざまで
31歳の成美は一度は小説家デビューを果たしたものの、
思うように作品を書けなくなり、現在は月収8万円ほどのアルバイトでなんとか生活しています。
夢だった「専業作家」への道を諦めきれずにいる成美は、
ある日出会った人物の助言をきっかけに不動産投資を始めます。
家賃収入という現実的な支えを得て創作に打ち込もうとする彼女ですが、
その過程で「書きたいものを書くこと」と「生活のために稼ぐこと」の両立という
現実的な課題に向き合うことになります。
月10万円投資:備えと欲望の行方
29歳の明美は一般企業に勤める会社員ですが、
実家の両親が金銭感覚に甘いこともあり、将来に強い不安を抱えています。
そこで新しい少額投資制度である新NISAを活用し、
毎月約10万円をコツコツと積み立てることにしました。
徹底した節約で生み出した資金を投資に回し、「毎月10万円使っても減らない資産」という
お金の永久機関のような状況を作り出すことを目指します。
しかし、計画通りに資産が増えていく一方で、
明美の心にはさらなる欲が生まれてしまいます。
欲望と不安がせめぎ合う中、
彼女は本当に大切なものは何かを自問することになります。
月収100万円:パパ活で稼ぐ代償
26歳の瑠璃華(るりか)は、「パパ活」と呼ばれる
年上男性から経済的支援を受ける交際によって、毎月100万円もの収入を得ています。
若いうちにできるだけ多く貯金し、1億円を貯めるという強い野心を抱える彼女にとって、
お金は夢や自由をかなえる手段そのものです。
一見華やかな高収入生活を謳歌する瑠璃華ですが、
その陰では割り切れない孤独や葛藤もまた抱えています。
人との関係さえ金銭に換えてしまう生き方に、
彼女は何を得て何を失っているのか、物語はその光と影を映し出します。
月収300万円:富と孤独とお金の使い道
52歳の菊子は、自ら起業した会社をある事情でたたんだ後、
裕福な夫にも先立たれ、現在は遺産運用と株式投資によって
月に300万円ほどの収入を得ています。
働かずとも一生困らないだけのお金を手にした彼女ですが、
その生活には充足感と同時にある種の虚しさも漂っています。
菊子は多額の資産を抱えながら、
「お金をどう使えば人生は豊かになるのか」に思いを巡らせます。
十分なお金があっても満たされない心、自分にとって本当に大切なものは何なのか
悠々自適にも見える彼女の生活にもまた、考えさせられる葛藤が存在するのです。
月収17万円:若き日の挑戦と未来
22歳の静江は介護施設で働く新人職員で、手取りの月収は17万円ほど。
重労働のわりに収入が少ない現状に将来への不安を感じていた彼女でしたが、
高齢者のお世話をする日々の中であるアイデアを思いつきます。
それは、生前整理(せいぜんせいり)と呼ばれる
「人生の終わりに向けた持ち物の整理」を手伝う新しいサービスを起業することでした。
自ら事業を起こし収入を得る道を模索し始めた静江の物語は、
これから社会に出ていく若者の挑戦と希望を描いています。
『月収』の感想
お金・働き方が問いかける幸せのかたち
『月収』に通底するテーマはずばり「お金」と「幸せ」の関係です。
異なる月収を得る6人の女性たちの姿から浮かび上がるのは、
「お金は人生にとって何なのか」「幸せに生きるためにお金とどう向き合うべきか」という
普遍的な問いでした。
作中では、お金にまつわる様々な側面が巧みに描かれています。
まず、お金がもたらす安心感と不安について
本作では、経済的に困窮する老後の不安や、
将来に備えるための必死のやりくりがリアルに描かれ、
読者は誰もが直面しうる「お金の不安」に共感します。
例えば響子や明美の物語では、
手元のお金が少ないことから生じる切実な不安と、
それを少しでも和らげようとする健気な努力が伝わってきます。
一方で、十分なお金を手に入れても、不安が消えるとは限らないことも示唆されます。
菊子のように資産を持つ者でも、将来への漠然とした不安や孤独は完全には拭えず、
「お金があれば幸せ」という単純なものではない現実が浮き彫りになります。
次に、働き方や生き方の多様性と価値観が際立っている点も特筆すべきです。
六人はそれぞれ異なる手段で収入を得ており、
その選択には本人の価値観や人生観が色濃く反映されています。
静江のように使命感を持って新事業に挑む若者もいれば、
成美のように夢と収入のバランスに悩むクリエイターもいます。
また瑠璃華のように割り切って高収入を狙う人もいれば、
菊子のようにお金との付き合い方自体を見つめ直す人もいます。
「どう稼ぐか」「何のために稼ぐか」という問いに対する答えが
人それぞれであることを、本作は鮮やかに描き出しているのです。
さらに、本作は現代社会の写し鏡としての一面も持っています。
物語には新NISAやふるさと納税、インボイス制度といった
現代の社会制度やトレンドが登場し、親の介護問題やパパ活、終活など、
ニュースで聞くような話題がふんだんに織り込まれています。
これらの要素があることで、フィクションでありながら
どこか現実の延長のような臨場感が生まれ、
「こんな人が身近にもいそうだ」と感じさせられます。
原田ひ香さんの筆致はユーモアと温かみがありつつも
非常にリアルで、登場人物の心理描写や生活描写には
思わずうなずいてしまう説得力があります。
読者は六人の人生を覗き見る中で、
自分自身のお金の使い方や働き方を省みるきっかけを得られます。
お金は魔法の杖ではないけれど、人生を左右する大きな要素である
本作を読み終えたとき、誰もがこのような当たり前だけど重要なことに
改めて気づかされるのではないかと感じました!
お金によって得られる幸せもあれば、お金では買えない幸せもあり
そして時にお金は人の心を惑わせ、価値観を試す存在にもなります。
本作は決してお金を善とも悪とも断じませんが、
読後には「では自分にとって月にいくらあれば本当の幸せだろうか?」と、
自らの価値観を静かに問い直したくなる作品だと感じました!
最後に
ここまで本書について紹介してきました。
お金に振り回されそうになったときや
お金との付き合い方や幸せのかたちについて考えたいときに
大切なものが何かを考えるヒントが得られる作品でした!
本書が気になる方は、是非手に取ってみてください!
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