こんにちは!しょーてぃーです!
今回は、塩田武士さんの『罪の声』について紹介をしていきます!
『罪の声』について
この記事でわかること
- 『罪の声』のざっくり全体像
- ネタバレ控えめのあらすじ(前半まで)と、読みどころ
- 読後に残るテーマと、心が引っかかるポイント
本書の概要
『罪の声』(塩田武士著、講談社、2016年刊)は、昭和最大の未解決事件「グリコ・森永事件」をモチーフにした社会派サスペンスです。
物語は、京都で仕立て屋を営む曽根俊也が、亡き父の遺品から古いカセットテープを見つけるところから始まります。
そのテープから流れてきた「幼い頃の自分の声」が、31年前の未解決事件「ギンガ・萬堂事件」で使われた声と同じだと知り、俊也は家族の過去を疑いながら調べ始めます。
一方で、大阪の新聞記者・阿久津英士も同じ事件を追っていて、やがて二人の調査が交差し、過去と現在がつながっていきます。
本書をオススメしたい人
- 実在事件を下敷きにした、社会派サスペンスが好きな人
- 「犯人当て」だけじゃなく、家族や過去の影が残す痛みを読みたい人
- 取材の厚みがある長編ミステリーで、じわじわ真相に近づく感覚を味わいたい人
正直、あまり向いていない人
- 軽いテンポで笑えるミステリーを求めている人
- 登場人物が多い話が苦手で、一直線の物語が好きな人
- 現実の事件を想起させる題材そのものに、しんどさを感じやすい人
『罪の声』のあらすじ
あらすじ(ネタバレ控えめ・前半)
京都でテーラーを営む曽根俊也は、2015年の夏、亡くなった父・清太郎の遺品整理をしていて、古いカセットテープと黒革のノートを見つけます。
ノートには英語の文章や「ギンガ」「萬堂」という文字があり、嫌な予感が消えません。正直、この時点で胸の奥がひゅっと冷える感じがしました。
テープを再生すると、幼い子どもの声で怪文書が読み上げられます。そして俊也は、それが31年前の未解決事件「ギンガ・萬堂事件」で犯人が使った音声と一致していると知ります。
「これ、自分の声だ」と気づいた瞬間から、俊也の世界は一気に色を変えていきます。家族の記憶が、急に“信用できないもの”に見えてくるんですよね。
俊也は父の幼馴染でアンティーク家具店を営む堀田信二に打ち明け、協力を得ながら調査を始めます。父の兄にあたる「叔父・達雄」の存在が匂わされ、過去が少しずつ輪郭を持ち始めます。
事件当時、犯人グループが密会した料亭の話や、元警察官の名前など、断片が地道に集められていきます。派手な推理というより、足で拾う情報が積み上がっていく感じです。
同じころ大阪では、新聞記者・阿久津英士が年末の未解決事件特集の取材で、この事件を追っています。阿久津は社内の資料や関係者の証言を頼りに、事件の裏側にある構図を探ろうとします。
京都の「家族の謎」と、大阪の「報道の視点」。二つの線が並走しながら、だんだん同じ一点へ寄っていくのが前半の大きなうねりです。
この作品はどんな読書体験か
『罪の声』は、ページをめくるほど「知らなかったはずの過去」が、いまの生活の足元に入り込んでくる読書体験だと思います。
派手なトリックよりも、“現実の肌ざわり”がじわじわ迫ってくるタイプで、読みながら何度も「もし自分だったら?」と立ち止まりました。
そして怖いのは、恐怖の正体が怪物じゃなくて、人間の事情や沈黙だったりするところなんですよね。
『罪の声』の感想
感想①:テーマ
この作品の芯は、「罪は誰のものか」という問いだと感じました。事件を起こしたのは過去の誰かで、主人公たちは“いま”を生きているのに、突然その影が落ちてくる。
とくに「子どもたちの声」に焦点が当たることで、加害と被害の線が単純じゃなくなります。巻き込まれた側の人生が、ずっと続いてしまう怖さがあるんですよね。
正義を掲げるだけでは救えないものがあり、真実を知ることもまた、傷になる。ここが、社会派サスペンスとしての重さだと思います。
読みながらずっと考えてしまいました。もし自分の“声”が、誰かの悪意に使われていたら、あなたはどうしますか。
感想②:人物(語り)
俊也は、特別な能力があるわけじゃない「普通の人」です。だからこそ、遺品のテープをきっかけに生活が揺れていく怖さが、こちらにも伝わってきました。
一方の阿久津は、新聞記者として事件を追う立場で、情報を集め、つなぎ、社会に出す役割を背負っています。個人の痛みと、公共性の間で揺れる感じがいいんですよね。
二人の視点が交互に進むことで、同じ事件が「家族の物語」にも「社会の物語」にも見えてくる。ここがこの長編の強みだと思います。
脇役も含めて、“誰かの人生の延長線上”で動いている感覚があり、作り物っぽさが薄いところも印象的でした。
感想③:読後感
読後に残るのは、スカッとした解決感というより、静かな重みでした。未解決事件をモチーフにしている分、現実の影がどうしても重なります。
それでも、ただ暗いだけじゃなくて、「それでも生きていく」側の視線があるのが救いだと思います。真実の先に、感情の整理が待っている感じです。
正直、読むタイミングは選ぶかもしれません。でも、心がざわつくからこそ、手元に残る本でもある気がしました。
読み終えたあと、家族のことを少しだけ丁寧に見たくなる。そんな余韻がありました。
この作品が投げかける問い
真実を知ることは、いつも救いになるのでしょうか。
そして、過去の罪や沈黙を「知らなかった側」は、どこまで背負う必要があるのでしょう。
『罪の声』は、答えを断定せずに、読者の胸にその問いを残してくる作品だと思います。
最後に
『罪の声』は、未解決事件の“謎”だけじゃなく、その周りで生きてきた人の人生を描く社会派サスペンスでした。
読み進めるほど、事件が遠い昔のニュースじゃなく、いまの生活の隣にあるものとして迫ってきます。重いけれど、目を逸らしたくないタイプの物語だと思います。
気になった方は、是非手に取ってみてください!

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