こんにちは!しょーてぃーです!
今回は朝井リョウさんの
「スター」について紹介します。
本書の印象に残った部分や感想を記載していきます。
本書をおすすめしたい人
・少しでも朝井リョウさんに興味がある人
・記念作品に興味がある人
・現代のスターの定義について気になる人
本書は、朝井リョウさんの
作家生活10周年記念作品(白版)です。
※黒版は「正欲」という作品で、こちらについてもまとめています。
朝井リョウさんの作品は
世の中の動きや、心情の変化にマッチしており
読了後は、考えさせられるものばかりです。
本書も、小説としてはもちろん
読み応えのある作品でありながら
現代のスターの定義について
非常に考えさせられる1冊です。
早速、私なりに気になったところや
感想を記載していきます。
「スター」について
あらすじ
本作は2人の若者の葛藤についての物語です。
主人公は
「立原尚吾(以下、尚吾)」と
「大土井紘(以下、紘)」の2人です。
2人は大学在学中に、映画サークルで出会い
そこから新人の登竜門となる映画祭で
グランプリを受賞します。
このまま2人で大学卒業後も
映画制作に取り組むのかと思われました。
しかし尚吾は名監督へ弟子入り
紘はYouTubeでの発信という
真逆の道を選ぶことになります。
「どっちが先に有名監督になるか、勝負だな」
この約束を2人で交わして
お互い別々の道へ行きますが
そこではそれぞれの苦労と葛藤が待っていました。
立原尚吾の葛藤
大学卒業後、尚吾は
「鐘ヶ江誠人」という
日本を代表する映画監督のもとに弟子入りしました。
現実世界でいう
「黒澤明」監督並みのレベルの人で
尚吾は鐘ヶ江誠人を
映画サークル時代から崇拝しています。
鐘ヶ江監督のもとで3年間
映画監督になるための修行に励みます。
「質の良い物に触れろ」
祖父の教えでもあるこの言葉を忠実に守り
「質の良い映画」を追求していきます。
鐘ヶ江監督のような
「何年も語り継がれる映画」
「記憶に残り続ける映画」
そんな映画を作るために、尚吾は日々精進していました。
しかし「質の良い映画」を作る自分よりも
紘のYouTubeの動画が
バズっていることを知ります。
残酷なことにバズっている動画は
「決して質の良いもの」ではなかったのです。
来る日も来る日も自分が作った脚本を
師匠である鐘ヶ江に「これでは世に出せない」と
返される日々が続きます。
かつて一緒に映画を制作した
紘の動画は高品質ではないものの
世に出回っている現実を突きつけられます。
「質の良いものを作れば世が認める」
ずっとそのように信じていた尚吾は
現実と自分の信念のギャップに戸惑い、葛藤していくのです。
大土井紘の葛藤
大学卒業後は、実家へ戻り
とあるきっかけからYouTube活動をすることになります。
YouTube活動といっても
YouTuberのような表に出るものではなく
動画編集のことです。
紘自身は島育ちで
「地元の景色をどうしたらカッコよく撮れるか」ということが
モチベーションでした。
そこから大学で状況し、尚吾と出会い
「かっこいいものをかっこよく撮る」ことで活動していました。
YouTube活動を始めた頃は
無理のない範囲である週4ペースで
動画投稿をしていました。
しかしとある動画がバズってしまい
収益に目が眩んだ雇い主から
毎日投稿するように命じられます。
自分のポリシーであった
「よりよく撮ること」よりも
投稿ペースが重要視されます。
毎日投稿によって下がっていくクオリティに
紘は不満が溜まっていきます。
雇い主に対して
「これ以上クオリティを下げられない」と
反論します。
しかし雇い主からは
「視聴者なんて
どうせ動画の質の良し悪しなんてわかりはしない」
「とにかく自分たちの動画を
視聴者たちに毎日触れさせることが大事」と言われてしまいます。
バズっても、投稿ペースを上げて
決して人の記憶には残ることはない現実と、
自分の納得しているものではない映像を
世に出してしまう葛藤に苦しんでいきます。
「スター」の定義について
本書では、真逆の立場である
2人の葛藤をもとに
スターの定義について考えさせられます。
数年前のスターといえば
「国民的スター」であり
大多数の人が共通して認知していました。
しかし現代では
コンテンツが細分化しており
テレビだけでなく
YouTubeやInstagramなど
派生しています。
また、演者側も昔は
「高倉健」や「明石家さんま」など
映画界やテレビ界などを代表する人がスターでした。
しかしコンテンツが細分化した現代では
テレビタレントだけでなく
YouTuberやインスタグラマーなど
演者側もカテゴリーが多くなりました。
更に、同じ媒体でも人によって
知っているチャンネルなどは違い
共通した「国民的スター」が少なくなっています。
また、著者の朝井リョウさんも
下記のように述べています。
どの家庭にも届く“新聞”に
小説を連載することは
子どものころからの夢でしたが、
いざ現実になったとき、新聞の影響力は
小さくなっていました。
そんな認識のズレを行き来するうち
削り出てきた文章たちです。
引用元:https://publications.asahi.com/star/#content05
人によって消費するコンテンツが異なった世相を
ものすごく反映しており
非常に考えさせられる物語です。
最後に
ここまで本書を紹介してきました。
個人的には
尚吾と紘のお互いの葛藤と
スターの定義について
印象に残りました。
しかし、他の登場人物の立場や葛藤
更には「コンテンツの質」や
「コンテンツの賞味期限」についても考えさせられます。
本書が気になられる方は、是非手に取ってみてください!
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