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「1ミリの後悔もない、はずがない 」の要約と感想について

小説

こんにちは!しょーてぃーです!

今回は一木けいさんの

「1ミリの後悔もない、はずがない」について紹介します。

 

本作をおすすめしたい人

・短編小説がお好きな方

・過去の恋愛を思い出したい方

・読了後に考えさせられる作品が好きな方

 

本作は「第15回、女による女のためのR-18文学賞」で

読者賞を受賞された一木けいさんのデビュー作です。

 

本作は、五編の作品による連作短編で

大人らしい表現が多数ありの1冊であります。

 

早速、私なりに気になったところや、感想を記載していきます。

 

「1ミリの後悔もない、はずがない」について

本作の構成について

本作は、五編の短編小説で構成されています。

それぞれの物語は

時間も語り手も場所も異なります。

 

しかし、それぞれの物語はつながっています。

そのため、個人的には

短編連作集というより、5編で1つの長編小説だと感じました。

 

それぞれの物語について

西国疾走少女

1つ目の物語の「西国疾走少女」は

主人公の由井は、諸事情のある中学生です。

 

母、妹と3人で暮らしていて

父親は一緒に暮らしていません。

 

無職である父親の事情は、

物語をすすめると明らかになっていきます。

 

経済的に苦しい家庭で過ごす由井は

同級生の桐原に恋をします。

 

桐原は背が高く、

脚が机からはみ出るくらい長くて、色気満載です。

 

恋をすることは、困窮するような生活を救わないですが、

それでも由井は恋に向かって突っ走っていきます。

 

友達付き合いから由井と桐原は

心の距離がだんだんと近くなっていきます。

 

由井は桐原と一緒にいる時は、

周りが見えないほど恋に没頭しているので、無敵に感じます。

 

そして、徐々に桐原との時間が

由井のすべてになっていきます。

 

その一方で

母子家庭で、父親が生活保護を申請したという通知が届きます。

 

たまに父親に会いに行っても、不快な思いをするだけです。

 

そんなクソみたいな日常でも、桐原に会うために西国分寺を疾走しているわたしは最強だ。

 

困窮している現実でも、恋に没頭することで

1人の人間を救っているんだなと感じました。

 

そして中学生の恋は

それが人生の全てになってしまうあたりに

甘酸っぱく懐かしく感じてしまいました。

 

ドライブスルーに行きたい

2つ目の物語は

由井の親友だったミカが主人公です。

 

社会人になったミカは

中学生の時に好意を持っていた高山先輩と

偶然再会します。

 

しかし、学生時代はモテていた高山先輩は

大人になると、すこぶるダサくなっていました。

 

高山先輩自身も

モテていた学生時代をひきづっています。

 

太った中年になった自分を

いつまでもかっこいいと思っています。

 

学生の頃には憧れの的だった人が

大人になってだらけた状態になっていました。

 

同窓会とかで遭遇した時に

いい意味でも悪い意味でも人は変わるなーと

個人的に共感しかなかった話です。

 

潮時

3つ目の物語の主人公は2人います。

1人目は由井の夫である雄一です。

 

雄一は、自宅へ帰る飛行機に乗っていましたが

そこで事故に遭ってしまいます。

 

事故をきっかけに、雄一は過去を回想します。

 

施設で育ったことから

由井と出会った頃のことまでを思い出します。

 

一方そのころ、もう1人の主人公である加奈子は

欲求不満の主婦としての日常を、回想しています。

 

加奈子は由井と中学時代の同級生であり

当時、桐原のことが好きでした。

 

しかし、貧乏で冴えない由井が

桐原との距離を近づけていることに嫌悪感を抱いていました。

 

そして、由井のことを馬鹿にしていたのにも関わらず

桐原に告白できなかったことを、今でも後悔しています。

 

加奈子自身、子供を産んでから体重が戻らない現状と

先日、夫が浮気している証拠を掴んでしまった現実を

重ね合わせています。

 

自分には何もないから離婚は切り出せない

夫に構ってもらえていない現実と

好きだった桐原が、嫌いだった由井を好きになった過去を

照らし合わせて、打ちひしがれています。

 

一見まったく関係なさそうな

雄一と加奈子の話を読み進めていくと

最後の最後で見事に重なっていきます。

 

そう来たか!!!と思わせる

見事なオチでした。

 

穴底の部屋

4つ目の物語の主人公は

中学時代モテモテだったバレー部の高山先輩と

主婦の泉の話です。

 

高山は現在、コンビニでバイトをしながら

司法試験の合格を目指しています。

 

泉は義母との関係が苦痛だった日常で

コンビニで見かけた高山に一目惚れしました。

 

そこから高山と泉は

都合のいい時に一緒に寝る関係になりました。

 

「ドライブスルーに行きたい」では

ミカから見た高山は「学生時代から落ちぶれた人」でしたが

主婦の泉から見た高山は「だらしないけどモテる色男」なのです。

 

同じ人でも、立場や境遇が異なることで

ここまで見え方が変わるのか!と思えるくらい

面白みのある物語です。

 

高山は泉以外にも

一緒に寝る女性がいて、泉に対して「好き」とは言いません。

 

そして泉は、

義母との終わりのない苦痛な時間と

高山といつ終わるか分からない至福のひと時の

バランスが取れなくなっていきます。

 

千波万波

最後の物語は

由井の娘である河子目線で語られます。

 

河子は中学生ですが

中学進学とともに小学校時代の親友と思っていた友達から

前触れもなく仲間はずれにされます。

 

そこから学校に行きたくないと思い

両親に打ち明けました。

 

父親の雄一は、転校を提案しましたが

母親の由井は「河子はどうしたい?」と聞いてくれます。

 

そして由井と河子は

青春18きっぷで西へ向かう旅をします。

 

そして九州まで辿り着いた時

「ちょっと寄りたい」と由井が言った場所が

由井が夜逃げを繰り返しているうちに

一時期住んでいたところでした。

 

そこで「幸太郎」に出会います。

 

夜逃げを繰り返す中で

一時期、幸太郎の隣のボロ屋に住んでいたのです。

 

その時、幸太郎の母は、貧乏な由井の家の面倒を見てくれていました。

 

ふたたびの夜逃げをきっかけに

幸太郎の一家と音信不通になり

この旅をきっかけにお礼を言いに立ち寄ったのです。

 

そして、最後の最後で

すごいサプライズがあったのです・・・・

 

「1ミリの後悔もない、はずがない」というタイトル

この突き刺さってくるタイトルですが

この言葉自体は、桐原が放った言葉なのです。

 

「西国疾走少女」のなかで

由井と桐原が仲良くなっていきます。

 

そしてスキー旅行中に2人で

こっそり会おうとしますが

先生に見つかってしまいます。

 

その時のエピソードを

由井は以下のように覚えています。

 

あの日しゃべった内容はほとんど記憶から消えてしまったが、

ひとつだけ明確に覚えていることがある。

それは「うしなった人間に対して1ミリの後悔もないということが、

ありうるだろうか」というものだ。

桐原が発した問いだった。

由井は、桐原の言葉を何度も思い出します。

 

桐原と出会ってはじめて、自分は生まれてよかったのだと思えた。

彼を好きになるのと同時に、すこしだけ自分を好きになれた。

桐原がわたしを大事にしてくれたから。

 

困窮した家庭環境を唯一救い出してくれた

桐原の存在がその後の人生でも大きな支えになっていました。

 

そして「1ミリの後悔もない、はずがない」の背景には

だらしない父親への思いでもあることを感じました。

 

不可解な父親であり

自分をこんな目に遭わせる父親への怒り、憎しみは溢れてきます。

 

それでも人生は続いていきます。

 

そして由井自身がだらしない父親と同じ立場になった時

「子供に何を残してあげられるのか?」

そんなメッセージを本作から受け取りました。

 

最後に

ここまで本書を紹介してきました。

 

本作で出てくる登場人物は

いろいろな意味で過去を引きずっています。

 

それでも前を進んで生きていく姿を

さりげなく、強く表現してくれています。

 

本書が気になられる方は、是非手に取ってみてください!

 

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