こんにちは!しょーてぃーです!
今回は逢坂冬馬さんの「同志少女よ、敵を撃て」を紹介します。
本書の印象に残った部分や感想を記載していきます。
『同志少女よ、敵を撃て』について
本書の概要
逢坂冬馬さんのデビュー作であり、
アガサ・クリスティー賞大賞を受賞した作品です。
しかも史上初の「選考委員の全員が最高点をつけた作品」で、
第166回直木賞候補作にもなった作品です。
しかも、本屋大賞2022の大賞受賞作品であり
2位の作品と100点以上の大差をつけて受賞した
本書をおすすめしたい人
・本屋大賞2022の大賞受賞作品が気になる人
・リアリティを体感したい人
・ウクライナ問題に興味がある人
「第二次世界大戦中のロシアとドイツの対立状況」についての話で
描写が細かく、背景のしっかりした戦地での
展開もイメージしやすいです。
少女が復讐を誓い、技術を高めて
仲間と共闘してゆく物語です。
戦闘を重ねるに連れて
たくましくなっていく様子に
引き込まれていきます。
そして最終的には
それぞれの登場人物に
すごく親近感を抱いてしまいます。
また、昨今のウクライナ問題にて
世界情勢に対する危機感は高ぶっています。
あくまでも「ロシア兵の狙撃手」の視点で
物語は進みますが
戦士のことや戦場のリアルさを体験したい人は
本書はうってつけです!
「同志少女よ、敵を撃て」のまとめ
あらすじ
ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。
急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。
自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。
「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。
母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために……。
同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。
おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵”とは?
上記は早川書房の公式サイトからの引用になります。
引用元:同志少女よ、敵を撃て
主人公セラフィマは、
ロシアのモスクワ近郊の小さな村で暮らす16歳の少女でした。
セラフィマは母親とともに猟をして、
村の安全と村人の食卓に貢献していました。
頭の良かったセラフィマは、高校でドイツ語を習い、
将来は外交官としてドイツとソ連の
仲をよくしたいという夢を抱いていました。
しかし、1942年、ドイツ軍により
母親も村人達も惨殺されてしまいます。
そこに現れた赤軍の女性兵士イリーナは、
セラフィマの母親の遺体を家ごと焼いてしまったのです。
そしてセラフィマに「戦いたいか、死にたいか」と問います。
セラフィマは、母親を殺したドイツ兵と
遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために、
イリーナのもとで狙撃兵になるための訓練を受けることになります。
セラフィマと同じような境遇の女性達とともに、
熾烈な訓練に耐え、彼女たちは実戦に出て行くのでした。
狙撃兵の戦い方について
本作の見どころはいくつもありますが、
特にイチオシなのは
「狙撃兵としての戦いがリアルすぎるところ」だと思います。
集団で戦う通常の歩兵とは違がって、
狙撃兵の戦いは常に孤独です。
ただひとりで狙撃地点に籠って、
極寒の環境下で何時間も待機を強いられることもあります。
かと言って動けば自分が撃たれるという状況で
勝負を決めるのは一瞬であり、
失敗すれば、自分が狙われるような闘い方です。
初陣ではセラフィマも散々でしたが
戦歴を積む中で練度を上げ、有能な狙撃兵に成長していきます。
敵は誰なのか?
このタイトル「同志少女よ、敵を撃て」の
「敵」とは誰なのでしょうか?
最初は、ソ連軍の狙撃兵セラフィマの敵は
ドイツ軍だと思い込み、読み進めます。
しかし、ドイツ軍が降伏し、戦争が終わりに近づいた時に
なぜか「同志少女よ、敵を撃て」という言葉を聞くことになります。
セラフィマをはじめとする狙撃兵は訓練時から
「何のために戦うのか?」と何度も問われており
、それぞれの答えを持っていました。
「同志少女よ、敵を撃て」という言葉を聞いたときに
セラフィマの中で「敵」が確定します。
戦争で狂ってしまった世界観の中で
ひとりの人間セラフィマとして女性を守るために銃弾を放ちます。
伏線の多さと回収具合に脱帽
この作品は多くのの伏線が貼られていきます。
そして、物語が終わりに近付くにつれて
1つずつ伏線が回収されていきます。
登場した人物は忘れられることなく、きちんと回収されていき
「そこでそうなるのか!!」と思わず唸ってしまいました。
逢坂冬馬さんが凄すぎる!
デビュー作でここまでの
リアリティのある面白い作品が書ける
逢坂冬馬さんが凄すぎます。
なぜなら著者は日本人男性なのに
「狙撃兵にさせられて
戦場で生きる女性達を描いているから」です。
事実ベースに物語は進んでいき
死と向かい合わせの戦いを緻密に表現されています。
そして狙撃兵の会話や心情も
引きつけられるものばかりでした。
物語を読んでいる間は、
自分も戦場にいて、銃のスコープの先に敵や風景が見えていました。
また、逢坂冬馬さんは
戦時中の兵士の女性への性暴力について書いています。
性暴力は犯罪だという認識はあっても
男性社会の中では結局大きな問題として扱われない現実で、
それは女性蔑視であることを示しておられます。
逢坂さんは兵士の戦後についても触れています。
特に女性狙撃兵は、国のために戦ったのに
戦後は「魔女」や「人食い」と言われて恐れられます。
戦争が終わっても、
彼女達には以前のような平和な社会は戻って来ないのです。
しかし、英雄的存在になったリュドミラは
「戦後は愛する人か生きがいを持て」と言いました。
戦後30数年が過ぎ、セラフィマはこの2つとも手に入れたようです。
愛する人とともに生きることと、
自分の経験した事実をこれからの人に語ること。
そこには人としての希望が持てました。
最後に
ここまで本書のを紹介してきました。
デビュー作ながらテーマの選び方やリアリティ、
伏線の回収の見事さが、
アガサ・クリスティー賞大賞作品だと納得させられました。
本屋大賞2022を受賞するに
ふさわしい作品だなと感じました。
もし本書が気になられた方は、是非手に取ってみてください!
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