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小田雅久仁さん著書 『残月記』のあらすじと感想について

小説

こんにちは!しょーてぃーです!

 

今回は、小田雅久仁さんの

『残月記』について紹介します

 

本書のあらすじと感想について

紹介していきます!

 

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『残月記』について 

本書の概要

本書は2009年『増大派に告ぐ』で

第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した

小田雅久仁さんによる

9年ぶりとなる新刊です。

 

しかも「残月記」が3作目でありながら

本屋大賞2022にノミネートされた作品です。

 

「そして月がふりかえる」

「月景石」

「残月記」と

月を題材にした3つの物語を

おさめた作品集です。

 

特にタイトルにもなっている

「残月記」は世界観が圧巻で

読んでいて、著者の独創性を

惜しげもなく感じることができます。

 

本書をオススメしたい人

・ファンタジー作品が好きな人

・ディストピアな物語が好きな人

・独唱的な世界観を感じたい人

 

3作どれもがディストピア作品で

「ここまで理不尽なことになるのか?」と感じます。

 

人間の存在は小さくて

どうしても覆すことができない運命が

存在していることを突きつけられます。

 

そんな残酷な世界の中でも

「愛とは何か?」

「生きるとは何か?」について

考えさせられる作品です。

 

『残月記』のあらすじ

あらすじの概要

近未来の日本、悪名高き独裁政治下。

世を震撼させている感染症「月昂」に冒された男の宿命と、

その傍らでひっそりと生きる女との一途な愛を描ききった表題作ほか、二作収録。

「月」をモチーフに、著者の底知れぬ想像力が構築した異世界。

足を踏み入れたら最後、イメージの渦に吞み込まれ、もう現実には戻れない――。

最も新刊が待たれた作家、飛躍の一作!

引用元:残月記

 

「そして月がふりかえる」

43歳の大学教授・大槻高志が

幼少期に感じた月に対して不安視する

描写から物語が始まります。

 

夜空に浮かぶ月は、俺だけにしか見えない

「俺の月」なのではないか……。

 

ある夜、高志は妻の詩織と

2人の幼い子供を連れて

レストランへご飯を食べにいきました。

 

一家団欒の楽しいひと時を過ごし

高志はトイレを済ませて、席へと戻ろうとした時

レストランにいたすべての人が

空に顔を向けて食い気味に月を見ていました。

 

自分も月に視線を向けると

月が少しずつ回転し

自分には見せたことのない

裏側が見えたところで、ぴたりと静止しました。

 

何事もなくテーブルに戻ると

妻は「どなたですか?」と言いました。

 

ふと自分がいた席を見ると

自分によく似た男が座っていました。

 

混乱状態になりながらも高志は

月の裏側が表となる「もう一つの世界」で

「もう一人」の人生を歩まされる運命に

陥ってしまったことに気付きます。

 

運命に逆らおうとしますが

「入れ替わった」という自説は

証明することなどできません。

 

元いた日常へ戻れることを

諦めながらも、高志が願った「たった1つこと」とは?

 

「月景石」

主人公である会社員の女性・澄香は

9歳の時に他界した伯母の桂子から

形見分けとしてもらった

「風景石」にまつわる物語です。

 

桂子は何気ない石を

コレクションしていましたが

その中に「月景石」と呼んでいた石がありました。

 

この石は、表面に月の風景が

描かれているように見える石で

桂子は枕の下に月景石をおいて眠ると

「悪夢を見るから絶対にしては駄目」と言っていました。

 

しかし澄香は、そのエピソードを

同棲相手の斎藤に話すと

気になるなら、枕の下に石を置いて

眠ってみるよう勧められます。

 

かつて耳にした桂子の言葉通りに

枕の下に月景石をおいて眠ると

澄香は月世界で暮らすスミカドゥミとして覚醒します。

 

胸に石が埋め込まれたイシダキである彼女は、

仲間達と共に故郷の村から

首都へと移送される途中でした。

 

どうやら月世界での生物の生存を可能にした

大月桂樹が枯れてきたので

イシダキたちの力が必要になったというのだが……。

 

「残月記」

2030年代に恐ろしい病である「月昂症」が

日本中で大流行しました。

 

「月昂症」の症状として

満月になると精神も肉体も高揚し

様々な犯罪を引き起こしてしまいます。

 

一方で、新月の時期には

活動力が弱まって死に至ることもある

危険な病でした。

 

そんな中、内閣総理大臣である

下條拓による独裁主義国家の実現により

月昂者は2064年には3千人以下にまで

抑え込まれました。

 

政府は感染者を療養所に送ることで

一気に感染者を減らしました。

 

しかし実際は、療養所とは

名ばかりの収容所で生涯を送ることを

強制する政策でした。

 

そんな時代に生きる孤独な少年

宇野冬芽も発病し拘束されます。

 

しかしは冬芽は剣道で中学時代に

全国3位になった実績から

療養所に送られる代わりに

「剣闘士」としてスカウトされます。

 

実は、政府が秘密裏で

月昂症に感染した患者同士の戦いを

エンターテイメントとして楽しんでいました。

 

それは月昂症患者に、高価な薬を提供し、

延命することことを約束する代わりに

武器を手に取って戦う患者たちを

時に死に追いやる娯楽だったのです。

 

月昂症の患者は30戦を戦いぬけば

引退することができ、勝つごとで

好みの女性と一夜過ごすことを許されます。

 

このような状況下で冬芽は

剣闘士として勝利を重ねます。

 

そしてそこで1人の女性と出会い

引退後に彼女とともに療養所で過ごすことを

願いながら戦いを続けます。

 

『残月記』の感想

ディストピアのオンパレード

3作とも絶望的な物語であり

ここぞとばかりに物語の主人公たちを

絶望へ追い込んでいきます。

 

「そして月がふりかえる」では

大槻高志が突然パラレルワールドに

迷い、今まで培ってきたものが

全て自分の手元から無くなっていく姿は

読んでいて辛さしかなかったです。

 

努力して手に入れた仕事に

家族、そして幸せなど

一瞬にしてゼロになる。

 

そして、全てを失った男が行為は

それまで真っ当だった人間だからこそ

不気味さと恐ろしさを感じます。

 

「月景石」では

滅びきった後の世界から

新世界へ移り変わるときは

桂子の言葉通りの悪夢で

残虐かつホラー要素が強いです。

 

そしてメインである「残月記」では

独裁政権に人生を奪われても

愛する女性のために抗い続ける

冬芽には胸を打たれます。

 

難病に苦しむ男女を嘲笑うような社会で

目をそむけたくなる暴力や

手に汗握る展開があり

儚くも美しいラストに本書の魅力を感じます。

 

独特な文章構成

本書は、読み手が不気味さと世界観を

感じるよう構成されているように感じました。

 

全体的に冗長さがなく

書くところと書かないところを

ハッキリ分けているように感じました。

 

また、改行の少なく

詩情を感じさせる文章でありながら

こっそりと心の裏側に忍び込んでくる

不気味さを感じます。

 

改行が少ないうえに、状況や人物の心情を

冗長と感じかねないほどに

緻密に描写してあります。

 

そのため381ページでありながら

文字数から言えば500ページくらいあったと

言われても納得できてしまう印象でした。

 

しかし情感に満ちているためか

その緻密さが気にならず

冗長と感じるところがない構成をした著者の

文才っぷりを如実に感じました。

 

最後に

ここまで本書について紹介してきました。

 

圧倒的な世界観で本屋大賞2022に

ノミネートされたのではないかなと

個人的に感じました。

 

ファンタジーでもあり、ホラーでもあり

ディストピア満載ながらも

ラストは感動してしまう作品でした。

 

本書が気になる方は

是非手に取ってみてください!

 

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