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西加奈子 さん著書 『夜が明ける』のあらすじと感想について

小説

こんにちは!しょーてぃーです!

 

今回は、西加奈子さんの

『夜が明ける』について紹介します。

 

本書のあらすじと感想について

紹介していきます!

 

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『夜が明ける』について 

本書の概要

本書は2015年に『サラバ! 』で

直木賞を受賞された西加奈子さんによる

5年ぶりの長編小説です。

 

現代日本に存在する

若者の貧困、 虐待、 過重労働

生きることが辛い人への自己責任論が

本書のテーマとなっています。

 

このような社会問題に対して

「自分が書いていいのか?」

西加奈子さんは葛藤し続けました。

 

それでも、社会の一員として

作家のエゴとして

「書かないといけない」という使命感から

生み出された渾身の作品です。

 

著者のコメントはこちら

夜が明ける公式サイト

 

本書をオススメしたい人

・日本の社会問題の現実を知りたい人

・西加奈子さんの渾身の作品が気になる人

・2022年本屋大賞のノミネート作品が気になる人

 

著者が本気で社会問題に対して

向き合ったこそ、読者に響く1冊となっています。

 

若者の貧困、 虐待、 過重労働など

世の中には、苦しんでいる人が多く

それでも1日1日を

なんとか生きていかないといけない

現実を目の当たりにします。

 

また、これらの問題に

1度でも直面した人は、本当に刺さります。

 

また、そんな本書だからこそ

数々の著名人もコメントを残されています。

 

小泉今日子さん (俳優)

今、 社会の中で、 気付かなくちゃ、

感じなくちゃいけないことがきっちり書いてある。

 

是枝裕和さん (映画監督)

読んでいる間中、 自分も主人公と同じように経験した「痛み」が胸にこみ上げ

息が苦しくなった。 これが小説であることをしばしば忘れ、

その度に本を閉じたが、 読み終わったときに感じたものは「希望」に近い何かだった。

「幸福」とも「解放」とも違う、 何かだった。

 

仲野太賀さん (俳優)

息を殺しながら生きなくてもいいように、

誰かの心が壊れないように、

この物語が生まれたんだと思う。

 

二階堂ふみさん (女優)

ページを捲る度に、 五感が研ぎ澄まされる。

匂い、 味、 温度、 小さな痛み。

この国に、 アキはどれほどいるのだろう。

人間は脆く、 そして哀しい。

どこまでも、 哀しい。

だからこそ”優しさ”の奇跡が生まれるのだと、 西先生の綴る文章から感じました。

これは遠い誰かの話では無く、 間違いなく”我々の話”であると思います。

引用元:夜が明ける公式サイト

 

現実社会を鮮明に突きつける本書は

本屋大賞2022にノミネートされるべき

作品だなと感じました。

 

『夜が明ける』のあらすじ

15歳の時、 高校で「俺」は身長191センチのアキと出会った。

普通の家庭で育った「俺」と、 

母親にネグレクトされていた吃音のアキは、 

共有できる ことなんて何一つないのに、 

互いにかけがえのない存在になっていった。

 大学卒業後、 「俺」はテレビ制作会社に就職し、 

アキは劇団に所属する。

しかし、 焦がれて飛び込んだ世界は理不尽に満ちていて、 

俺たちは少しずつ、 心も身体 も、 壊していった……。

 

思春期から33歳になるまでの二人の友情と成長を描 きながら、 

人間の哀しさや弱さ、 そして生きていくことの奇跡を描く。

本書は著者が初めて、

日本の若者の生きていく上でのしんどさに真正面から取り組んだ作品。

引用元:夜が明ける Amazonページ

 

アキについて

深沢暁こと「アキ」は

身長191センチと図体は大きいが

吃音で引っ込み思案で友だちも居ません。

 

そんな「アキ」に主人公の「俺」は

「お前はアキ・マケライネンだ」と命名します。

 

アキ・マケライネンは

フィンランドの役者で

悪役やアル中の役をやるくらいで

目立たない役者です。

 

そんなアキ・マケライネンに

そっくりであり、「アキ」の命名が

暁の人生を明るくしていきます。

 

アキは、父親のことを知らず

母は外で客を取る仕事をしている家庭で育ちました。

 

母親はずっと病んでいて

半分ネグレクト、半分虐待という子供時代を過ごしました。

 

お金もなくて、食べるものもない時に

「アキ」と名付けられて

「俺」から借りたアキ・マケライネンが出ている

映画を観て、自分をアキ・マケライネンにしていきます。

 

高校卒業後は

マケライネンのような俳優を目指して

劇団「プウラの世田谷」に入ります。

 

劇団員たちを「みんな家族」と謳っている

主宰の東国伸子は

彼の吃音を治すと言ってくれました。

 

しかし訓練と言いながらも

アキは芝居の稽古とは全く関係のない

劇団の身の回りのことを

させられる日々が続いていました。

 

そして母が亡くなり

劇団に生活の全てを捧げていきます。

 

さらに「劇団員は家族だ」と

謳っていた東国が、アキの事を怖がるようになり

やがて劇団は解散します。

 

行くあてもなくなったアキは

新宿のにある、物真似バー「FAKE」に

勤めることになりますが

そこでの給料で生活する事はできず

路上で生活するようになっていきます。

 

「俺」について

普通の家庭で育った「俺」でしたが

16歳の時に、父を

自動車事故で亡くしてしまいます。

 

そして、父に借金があったことが発覚しますが

自殺の可能性もあったことで

生命保険が下りませんでした。

 

一気に家が困窮してしまい

部活もやめて、バイト生活に明け暮れます。

 

それでも母親から

大学に行くよう説得された俺は

奨学金を取って大学へ行きます。

 

日々の生活費と奨学金を返済すべく

歯を食いしばって、授業とバイトだけに明け暮れます。

 

周りがサークル屋の飲み会などに

明け暮れるのを横目で見ながら

嫉妬心を抱えながらも

「頑張らないといけない」と1人で戦います。

 

父の保険の交渉や

母の就職で世話になった

父の知人の弁護士である中島さんに

励まされながらもなんとか単位を取っていきます。

 

そして就職活動では

中島さんの正義感に憧れて、マスコミを志望し

テレビ局の下請け制作会社に就職します。

 

ですが、現実は

テレビの仕事と対人関係のブラックな環境が

少しずつ俺を壊し始めます。

 

テレビ局ディレクターからのパワハラ。

まとめて眠れるのは

「週1回、5時間くらい」という過酷な労働環境。

 

タレントの不祥事やADの失踪などが

全て自分に降りかかったことで

次第に死を身近に考えるようになり

リストカットを繰り返します。

 

理不尽な出来事に巻き込まれ続けて

8年ほど働いた結果、

胃腸炎で倒れて入院することになりました。

 

しかし、退院を告げられた時に

涙が止まらなくなり、家からも出れなくなり

会社を辞めさせられてしまいました。

 

『夜が明ける』の感想

読んでいて本当に苦しい

辛い小説であることを

前評判で何度も聞いて覚悟はしていました。

 

それでも超えていく苦しさが

何度も襲ってくる内容でした。

 

本当に今の日本で起きていることが

たくさん詰まっています。

 

貧困、虐待、過重労働、セクハラなど

アキと俺が日本の世の中で生きていく姿は

とてもリアルで、読んでいて「苦しい」と思ってしまいます。

 

しかし、これらの言葉に

変に慣れてしまっていることにも気付きます。

 

言葉ばかりで、本当に苦しんでいる人の姿を

見ようともしていないし

見れないようになっている社会を

突きつけられた感覚でした。

 

声を上げること

「俺」が会社を辞めさせられてから

しばらく経って、後輩ADの森が

突然家に来た時のシーンがあります。

 

「先輩には、先輩のために、声を上げてほしいんです。

苦しいときに、我慢する必要なんてないんです。それって誰が得するんだろう?

それに我慢を続けたら、きっと、声を上げた人を恨むようになっちゃうと思う。

先輩が私のことを嫌いなのは、私が先に声を上げたからじゃないですか?」(P.379)

 

これまで「俺」は

父親が借金を残して事故死してから

助けを求めずに頑張ることが当たり前でした。

 

アキも母子家庭で育ち

ネグレクトで虐待のある生活が当たり前でした。

 

生い立ちも卒業後の進路も違いますが

貧困、虐待、過重労働の被害者という点で

2人は共通していました。

 

そして2人とも

『誰かに助けを求める』ということを

知らなかったのです。

 

現実でも「困ったら助けを求めろ」と

いう声がありますが

本当に助けを求めることは難しいです。

 

助けを求めたことで

「自分が負け組である」という

風潮や見られ方をするのが怖くて

必死に隠してしまいます。

 

現状苦しんでいる人は

「助けを求めることを知らないのかもしれない」と

痛感してしまいました。

 

私も辛かった時期は

「助けを求める」という発想すらありませんでした。

 

我慢を続けたら、きっと、声を上げた人を恨むようになっちゃうと思う。

声を上げることの怖さと

それでも声を上げることの大切さを

森の言葉で気付かされました。

 

最後に

ここまで本書について紹介してきました。

現代社会の問題と

西加奈子さんの覚悟が

本書ではとても伝わってきます。

 

読み応えのある本書が

気になる方は、是非手に取ってみてください!

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