こんにちは!しょーてぃーです!
今回は、伊与原 新さんの
『八月の銀の雪』について紹介をしていきます!
『八月の銀の雪』について
本書の概要
本書はひとことで言うと
自然科学が生み出す心温まる短編集です。
本書をオススメしたい人
・心が温まる物語が好きな人
・あまり上手くいっていない人
・本屋大賞ノミネート作が気になる人
直木賞の候補作にもなり、
本屋大賞にもノミネートされた本作は5篇からなる短編集です。
各短編の主人公は性別も年齢も悩みも全く違いますが
共通して、現状を抜け出せない閉塞感を抱いています。
どの短編も普通の人々が描かれていおり
自分自身を見つめ直して、新しい人生を歩もうとしていく物語です。
また本作の特徴は、自然科学とそれに関わる人たちが、
彼ら彼女たちの心に変化を与えます。
自然科学がドラマチックな現象を起こし
その現象が心に変化をもたらします。
『八月の銀の雪』のあらすじ
あらすじの概要
不愛想で手際が悪い――。コンビニのベトナム人店員グエンが、就活連敗中の理系大学生、堀川に見せた真の姿とは(「八月の銀の雪」)。会社を辞め、一人旅をしていた辰朗は、凧を揚げる初老の男に出会う。その父親が太平洋戦争に従軍した気象技術者だったことを知り……(「十万年の西風」)。科学の揺るぎない真実が、傷ついた心に希望の灯りをともす全5篇。
新潮社 より
八月の銀の雪
主人公の堀川は就活で内定が出ずに苦しんでいるの理系学生です。
よく行くコンビニの店員・グエンは
日本語が得意ではなく、慣れない接客をしています。
コンビニで同じ大学の清田から声をかけられ
ある仕事を手伝ってくれと言われます。
それはいかにも怪しいマルチ商法の商談サクラ役ですが
お金が必要だったから堀川はそれを引き受けます。
海へ還る日
主人公は子育てに自信が持てないシングルマザーです。
娘の果穂と出かける時に、周りが迷惑しているのではないかと
過度に悪い妄想をしてしまいます。
ある日、電車で席を譲ってくれた女性から
博物館で行われている「<海の哺乳類展」というイベントのチラシを渡されました。
さっそく娘と一緒に「海の哺乳類展」へ行くとそこには先ほどの女性がいました。
女性は定年後に動物研究部の委託職員として働く、宮下和恵という人物で
博物館にはクジラたちの生物画があり、全て宮下さんが描きました。
宮下さんとの出会いで、これまでの人生を振り返り
娘への向き合い方も変わるようになります。
アルノーと檸檬
不動産管理会社の契約社員である正樹は、
再開発のためのアパート全戸立ち退きのために
アパートの住民である寿美江のもとを訪れます。
寿美江は最近、アパートのベランダで迷い鳩を飼っており
ハトの脚環には「アルノー19」と書かれていました。
「立ち退きの前に迷い鳩の飼い主を探して」と言われた正樹は、
東日本鳩レースの事務局を訪れます。
するとハトや渡り鳥の本を書いている小山内という人物から
「アルノー」についての問い合わせがあったと聞きます。
正樹は小山内と会い、ハトについての知識を得ながら、飼い主探しをします。
段々と飼い主の存在が判明してきますが、
肝心なところでいつも分からなくなってしまいます。
玻璃を拾う
瞳子がSNSであげた写真に「休眠胞子」というなる人物から
著作権侵害を訴えるコメントが入ってきました。
それは友人の奈津から送られた写真に混じっていた画像であり
瞳子と奈津の2人は、休眠胞子と後日会うことになりました。
奈津と休眠胞子こと野中は、はとこ同士であり
野中の母親である雅代さんは、膠原病を患っていて、
例の画像は雅代さんから奈津の母親へと送られたものでした。
その画像がSNSで公開されたのをきっかけに、
そっくりのアクセサリーが無断で売られてしまいました。
十万年の西風
原発の下請け会社を辞めた辰朗は
一人旅で福島へ行く途中に、茨城の海岸に来ていました。
辰朗はそこで六角凧をあげる、初老の男性の滝口と出会います。
凧あげをしている滝口から語られるのは、
第二次世界大戦で使用された風船爆弾(気球兵器)のことです。
日本から放球された風船爆弾はアメリカ本土に達しています。
目標は民間人も含まれていることから、無差別に攻撃する兵器です。
滝口は気象学の元研究者であり、
その父親は戦時中に気象技術者として、軍事協力していました。
辰朗が職場を辞めた理由は、不都合な情報の隠ぺい行為が原因でした。
『八月の銀の雪』の感想
分かりやすい自然科学が描かれた物語
本短編集で取り上げられている物語は、
いずれも人と人との出会いによって
新しい人生を歩んでいく主人公たちに焦点が当てられていますが
物語のなかで自然科学的な知識がアクセントになっています。
地球の内側、クジラ、ハト、珪藻、気象など
普段馴染みがあるものから、今まであまり考えたことなかったものまで
意外な情報や新たな発見があるものばかりで、読者の知的好奇心をくすぐってきます。
本作の著者が、理学部助教として勤めたことのあり
その特徴が思う存分発揮されていました。
普段科学などまったく触れたことのない人でも
分かりやすく面白い!と思えるものばかりでした。
生きる希望を与えてくれる作品
本短編集の主人公たちは、あまり主人公らしくない人たちです。
現代社会のなかで窮屈さを感じていて
冴えない自分をどこか諦観しているような感じです。
そして彼ら彼女らは、みんな悩みを抱えています。
その悩みも、「就職活動がうまくいかない」「育児」など
普通の人が普通に持ちそうなものばかりで思わず共感してしまいます!
その悩みをちょっとした出会いをきっかけに解決していく物語で
主人公たちに変化があるシーンでは心が洗われるようにスッキリします。
最後に
ここまで本書について紹介してきました。
自然科学という面白い観点と
身近に感じる主人公たちの物語はとても面白かったです!
本書が気になる方は
是非手に取ってみてください!
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