こんにちは!しょーてぃーです!
今回は、ブレイディみかこさんの
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』について紹介をしていきます!
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』について
本書の概要
本書はひとことで言うと
多様性や偏見や差別に向き合い、成長していく物語の続編です。
本書をオススメしたい人
・社会の多様性やアイデンティティについて考えてみたい人
・海外と日本の教育や文化の違いに興味がある人
・前作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んで面白いと感じた人
本作は、ブレイディみかこさんによる大ベストセラーエッセイの続編です。
前作で人種差別や貧富の格差に悩んでいた12歳の「ぼく」は、
本作では13歳となり、ロンドンでの日々を通じてさらに成長していきます。
日本人の著者(母)とアイルランド人の父を持つ混血の息子「ぼく」は、
前作よりもたくましく自立心を身につけており、
親としてはその成長がうれしくも少し寂しいところです。
本作は、一見ポップな装丁とユニークなタイトルですが、
中身は英国で暮らす親子の日常を通じて
現代社会の様々な問題を映し出すノンフィクション作品です。
差別や格差、移民問題だけでなく、LGBTQやポリティカル・コレクトネスなど、
ニュースで耳にするトピックが日常の出来事として登場します。
これらは決して英国だけの話ではなく、
日本を含む世界中の「今」の現実につながる内容です。
「遠い国の物語」ではなく、私たち自身の問題として考えさせられる一冊となっています。
「重い」テーマを扱いながらも、著者のユーモアあふれる語り口のおかげで読みやすく、
笑いながら深く考えさせられる作品になっています。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』のあらすじ
あらすじの概要
中学生の「ぼく」の日常は、今も世界の縮図のよう。授業でのスタートアップ実習、ノンバイナリーの教員たち、音楽部でのポリコレ騒動、ずっと助け合ってきた隣人との別れ、そして母の国での祖父母との旅――“事件”続きの暮らしの中で、少年は大人へのらせん階段を昇っていく。80万人が読んだ「親子の成長物語」、ついに完結。
世界のやっかいに向き合う僕と母ちゃんの成長記
13歳になった「ぼく」が通う学校での生活は、引き続き小さな社会そのものです。
まず学校の授業では、中学生にして
スタートアップ企業の立ち上げを疑似体験する実習が行われます。
商品開発からプレゼンテーションまで、
生徒たちはチームで起業家精神を学びました。
母である著者は、日本の学生が大学で習うような内容を
息子が中学で経験していることに驚き、日本の教育との違いに考えさせられます。
学校の校長先生は首から虹色のストラップを下げ、
教師にはノンバイナリーの先生もいます。
授業中や日々の会話の中で、「男でも女でもない先生を英語で何と呼ぶの?」という話題になり、
生徒たちは代名詞について頭をひねります。
英国でも明確な答えは決まっていない問題で、
主人公も戸惑いますが、身近な先生の存在を通して多様な性のあり方を学んでいきます。
また、授業や日常の会話を通じて、
生理用品を買えない人々の問題(ピリオド・ポバティ、生理貧困)にも話題が及び、
「ぼく」も一人の男性として何ができるかを真剣に考える場面があります。
さらに、「ぼく」が所属する音楽部が開くクリスマス・コンサートを巡って、
思わぬポリコレ論争が巻き起こります。
ある言葉遣いや演目の選択が「誰かを傷つけるのではないか」と議論になり、
生徒や先生たちは意見を戦わせます。
例えば、定番のクリスマス曲の歌詞に差別的な表現が含まれていることが問題となり、
曲目を変更すべきか歌詞を差し替えるべきかで意見が割れたのです。
伝統を重んじる心と多様性への配慮がぶつかり合うこの騒動を通じて、
「ぼく」たちは時代の変化に向き合う難しさと大切さを実感します。
学校の外では、長年隣人同士で助け合ってきた近所の友人家族との別れも描かれます。
経済的に苦しい中で互いに支え合ってきた隣人が引っ越すことになり、
送別の場面では「ぼく」と家族も寂しさを噛みしめます。
それでも、お互いの幸運を祈り合い「グッドラック!」と
笑顔で別れるシーンは温かな余韻を残します。
この隣人家族は息子にとって小さい頃から親しい存在で、
異なるバックグラウンドを持ちながら互いに支え合ってきただけに、
その別れはなおさら切ないものがあります。
さらに、本作では「ぼく」が初めて日本を訪れて祖父母に会うエピソードもあります。
異国で育った「ぼく」にとって、日本で見る景色や文化は新鮮で少し戸惑うものです。
それでも優しい祖父母や日本の生活に触れる中で、
自分のルーツの一端を感じ取ります。
たとえば神社へのお参りや日本の学校見学など、
異文化体験に戸惑いながらも興味津々の「ぼく」の姿が微笑ましく描かれます。
短い旅の後、イギリスに戻る「ぼく」は、
異なる世界が自分の中にあることを実感しつつ、
それを受け入れてまた日常に帰っていきます。
学校の外に目を向ければ、イギリス社会全体でも
EU離脱ををめぐって世情が揺れており、
冬には総選挙が行われるなど激動の時期でした。
そんな大きな変化の中でも、
「ぼく」と家族は目の前の出来事一つひとつに向き合い、対話を重ねていきます。
このように日常の中の大小様々な事件を経験しながら、
「ぼく」は少しずつ大人への階段を上っていきます。
貧困や差別といった答えのない問題に直面しても、
母ちゃんや父ちゃんと一緒に悩み考えながら乗り越え、
自分の意見を持つ強さも育んでいきます。
そして季節が巡り、ついに親離れの時期が訪れようとしていることがラストで示唆されます。
「ぼく」の成長物語はこれで一区切りつきますが、
その先もネバーエンディング・ストーリーとして続いていく予感を残して物語は締めくくられます。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』の感想
ユーモアとまなざしで描く、多様性と共生のリアルな教科書
本作は、社会派のテーマを扱ったノンフィクションですが、
肩肘張らずに読めて心に響く1冊でした。
前作に続き、息子である「ぼく」の率直な疑問や発言にハッとさせられます。
たとえばノンバイナリーの先生に対して
「この人を何と呼べばいいの?」と素朴に投げかける場面では、
子どもならではの本質を突く視点だと感じました。
大人が当たり前と思い込んでいることを疑い、
多様な見方を教えてくれる「ぼく」の存在がとても貴重に思えます。
さらに、本書は問いに明確な答えを出すのではなく、
親子の対話を通じて読者にも一緒に考えさせるスタンスが貫かれていると感じました。
押し付けではなく「一緒に悩もう」という著者の姿勢が温かく、
読む側も自然と考えを巡らせてしまいます。
本作では「ぼく」が思春期を迎え、親子の会話にも
前作より踏み込んだテーマが増えました。
生理用品を買えない人々の問題など、
一見「中学生の息子と話すには重い」内容にも、親子で真正面から向き合っています。
どんな話題でもタブー視せず、
ユーモアも交えながら息子に伝えるブレイディさんの姿勢に胸を打たれました。
息子もまた一人の人間として、
男性であっても女性の困難に思いを巡らせる様子に、未来への希望を感じます。
男性である息子が女性の抱える困難に真剣に思いを寄せる姿勢は新鮮で、
ジェンダーに関わらず、誰もが社会問題を
自分ごととして捉えることの大切さを教えられました。
家族の会話を通じて、私自身も生理貧困という言葉を
本書で初めて知り、自分の視野が広がったように思います。
また、英国の教育や社会制度と
日本のそれとの違いも鮮明に描かれており、とても考えさせられました。
音楽部のポリコレ論争では、伝統を守りたい気持ちと
多様性を尊重したい思いのせめぎ合いがリアルに伝わり、
自分だったらどう感じ行動するかを想像しました。
さらに大型台風の中でホームレスの方が避難先を求めた際、
「社会を信じる」とはどういうことか問いかけるエピソードでは、
自分ならどうするだろうと深く考えさせられます。
イギリスでは中学生がこうした社会問題について
活発に議論していることにも驚かされ、
「日本の学校や社会ではどうだろう?」と考えずにはいられませんでした。
現地で暮らすからこそ見えるリアルな問題の数々はどれも他人事ではなく、
著者たちの体験談を通じてしか知り得ない現実を教えてもらった気がします。
著者の語り口は終始あたたかく、時にユーモラスです。
イギリス育ちの息子と、パンクな母ちゃんである著者の掛け合いは
型破りで痛快さもあり、愛情もたっぷり感じられます。
貧困や差別といった重いテーマでも日常の中の出来事として描くことで、
読者も自分ごととして捉えやすくなっています。
特に家族や友人とのエピソードには笑える場面も多く、
クスッとした後にハッと考えさせられる展開の連続でした。
2作で完結してしまうのが少し寂しいほど、心に残るシリーズでした。
描かれる出来事は単なる「異国の話」ではなく、
読むほどに「私たち一人一人の話」だと実感できる作品でした!
最後に
ここまで本書について紹介してきました。
多様性あふれる英国社会の日常を通じて、
私たち自身の社会を見つめ直すヒントを与えてくれる1冊だと思います。
本書が気になる方は、是非手に取ってみてください!
コメント