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『ケーキの切れない非行少年たち』の要約について

ノンフィクション

こんにちは!しょーてぃーです!

今回は、宮口幸治さんの

『ケーキの切れない非行少年たち』について紹介をしていきます!

 

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『ケーキの切れない非行少年たち』について 

本書の概要

本書はひとことで言うと

反省ではなく「理解」から始まる再出発を描いた一冊です。

 

本書をオススメしたい人

・少年犯罪の背景や更生方法に関心がある人

・教育・子育ての現場で子どもの発達や支援に携わる人

・発達障害や知的発達の問題について理解を深めたい人

 

本書は、児童精神科医である宮口幸治氏が、

少年院で出会ったケーキを等分に切れない少年たちの実態を描いた話題のノンフィクションです。

 

犯罪を犯した少年の中には知的発達が遅れた子どもが多く、

自分の罪を振り返ったり被害者の気持ちを想像したりすることができません。

 

タイトルにもあるケーキを等分に切れないというエピソードは、

彼らの認知機能の弱さを象徴しています。

 

一見普通に見えるため支援の手から漏れてしまった境界知能の子どもたちが、

認知の歪みや衝動性によって非行に走る実態と、

その背景にある教育や支援の課題を明らかにしています。

 

さらに彼らの認知機能を高めるトレーニング法も提案されており、

再犯防止への希望も示す内容です。

 

『ケーキの切れない非行少年たち』のまとめ

少年院で出会った「反省以前」の子どもたち

世間では非行少年に対し厳罰を求めたり、

深い反省を促す更生教育を施すべきだという声がしばしば聞かれます。

 

しかし、本書の著者である宮口幸治氏は、

そうした常識的なアプローチでは届かない

「反省以前」の子どもたちが存在することを指摘します。

 

宮口氏は児童精神科医として医療少年院(少年向けの矯正施設)に勤務し、

多くの非行少年と向き合ってきました。

 

その中で気づいたのは、罪を犯してもなお

自分の行いを振り返る以前の段階にとどまっている子ども、

いわば「反省以前」の存在が少なくないということです。

 

殺人や強盗といった凶悪犯罪を犯した少年であっても、

学力だけでなく物事を理解し判断する認知力が著しく低く、

「ホールケーキを3等分する」ことすらできない例が珍しくありません。

 

宮口氏が実際に出会った少年たちの中には、

高校生でありながら九九ができなかったり、

日本地図をうまく理解できなかったりするほど基礎学力が欠如している子もいました。

 

このように認知機能に問題を抱えた少年たちに対して、

周囲の大人がいくら「しっかり反省しなさい」と求めても、それ自体が難しいのです。

 

「普通の子」だから支援されない現実

彼らの多くは、IQの数値上では知的障害と診断されない

境界知能に分類される子どもたちです。

 

IQが70以上あると知的障害とは見なされないため、

一見すると普通の子どもとして扱われ、

学校や家庭で特別な支援を受けられないまま成長してしまいます。

 

しかし実際には、注意欠陥・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)、

学習障害(LD)など目に見えにくい発達の凹凸を抱えているケースが多く、

本来であれば支援が必要な存在です。

 

宮口氏の推計によれば、支援を必要としている子どもの割合は全体の約14%にも上り、

学校のクラスに換算すれば数人はいる計算になります。

 

しかし現状では、知的障害の定義がIQによって変更されたことで

IQ70以上の軽度な子どもは支援の対象から外れがちになり、

さらに本人も自分が「普通」であるかのように振る舞って支援を拒んでしまうため、

救いの手が届かないケースが多いのです。

 

この結果、学校の授業についていけず自信を喪失したり、

周囲との人間関係がうまく築けないまま孤立し、

ストレスや不満を溜め込んで非行に走ってしまう例が後を絶ちません。

 

さらに、こうした子どもたちの背景には

家庭内での不適切な養育や虐待など劣悪な環境要因が影響している場合もあります。

 

知能の特性と環境上の逆境が重なり合うことで、

彼らはますます社会で生きづらくなっていくのです。

 

その結果、著者は少年院が本来福祉や教育の現場で支えられるべきだった子どもたちの

最後の受け皿になってしまっている現状を指摘しています。

 

社会のセーフティネットから漏れた彼らが、

皮肉にも犯罪という形でようやく問題が表面化したとも言えるでしょう。

 

認知の歪みと衝動性が生む非行

認知機能の弱さゆえに、彼らの見ている世界は

私たちとは違って歪んでいることがあります。

 

例えば、相手と目が合っただけで「睨まれた」と感じ、

急に相手への敵意や強い被害者意識を募らせてしまう

そんな極端な認知の歪みがしばしば見られます。

 

また、衝動的で刹那的な行動も彼らの特徴です。

 

後先を考えずその場の感情に任せて突発的に暴力に及んだり、

ささいな指摘を自分への否定と受け取って逆上してしまうケースも少なくありません。

 

さらに、学校で「不真面目だ」と叱責されたり、

友人からいじめを受けたりした鬱屈が爆発し、

犯罪の加害者となってしまう例も指摘されています。

 

このように周囲から理解しがたい言動の裏側には、

本人たちの歪んだ認知と制御しにくい感情が横たわっているのです。

 

「褒める教育」の限界

現代の教育や子育てでは「子どもを褒めて伸ばす」

「まず話をじっくり聞いてあげる」といった方針が重視される傾向があります。

 

もちろんそれ自体は有意義ですが、

本書はそうした対応だけでは解決できない現実があることを示唆しています。

 

例えば、勉強についていけず自己評価が下がっている子に対して、

足が速い点を褒めたり、勉強ができない苦しみに耳を傾けたりしても、

当の「勉強ができない」という問題そのものは解決しません。

 

それでは問題から目を逸らし、

子どもの機嫌を一時取っているに過ぎない状況にもなりかねないのです。

 

宮口氏は、認知機能という「土台」がしっかりしていなければ

表面的な対応をいくら重ねても効果は薄く、

かえって問題を先送りにするだけだと指摘します。

 

本当に必要なのは、子どもたちが困っている根本原因に目を向け、

そこに働きかける支援なのだという著者のメッセージが伝わってきます。

 

認知機能を鍛える「コグトレ」という希望

絶望的にも思える現状ですが、本書は解決に向けた光も提示しています。

 

それが宮口氏らが開発した認知機能強化トレーニング、通称「コグトレ」です。

 

宮口氏は医療少年院で出会った子どもたちの

「弱いところを何とかしてあげたい」との思いから、

5年の歳月をかけてこのトレーニング法を考案しました。

 

生活していく上で必要な注意力・記憶力・思考力・判断力・想像力といった

認知機能の基本要素を鍛え、少しずつ強化していくプログラムです。

 

その効果は既に少年院などの現場で一定の成果を上げており、

認知機能が向上することで衝動的な行動の抑制や問題解決能力の改善が期待されています。

 

宮口氏はこのコグトレを通じて、

従来の支援の手が届きにくかった子どもたちにも生きる力を身につけさせ、

非行を予防できるのではないかと考えています。

 

単に厳罰化や精神論で更生を迫るのではなく、

科学的アプローチで子どもの認知面に働きかける本書の提案は、

社会にとって大きな示唆と希望を与えるものと言えるでしょう。

 

最後に

ここまで本書について紹介してきました。

 

本書を読み終えて振り返ると、飛行少年たちに本当に必要なのは

叱責ではなく理解と支援なのだと改めて実感しました。

 

誰もが生きやすい社会を目指す上で

大人こそ知っておきたい示唆に富む内容だと思います。

 

本書が気になる方は、是非手に取ってみてください!

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