こんにちは!しょーてぃーです!
今回は、荒木博行さんの
『藁を手に旅に出よう』について紹介をしていきます!
『藁を手に旅に出よう』について
本書の概要
本書はひとことで言うと
働き方に悩む人に優しく問いを投げかける1冊です。
本書をオススメしたい人
- キャリアや働き方に漠然とした不安やモヤモヤを抱えている人
- 日々の仕事で壁にぶつかり、自分の強みの活かし方や成長方法に悩んでいる若手社会人
- 小難しいビジネス書より、物語や寓話から楽しく学びたい人
本書は、「伝説の人事部長」による働き方の教室とも言える1冊で、
よくわからないまま社会に飛び込んだ20代・30代の会社員に向けて書かれています。
物語の主人公は新人社員のサカモトで、
働く意味が見出せず「このまま今の会社にいていいのか?」
「自分の価値とは何なのか?」と悩んでいます。
そんな彼らの前に“伝説の人事部長”石川さんが現れ、
誰もが知る『うさぎと亀』や『桃太郎』などの寓話を題材に12回の研修講義を行い、
「働き方のモヤモヤ」に答えを出すヒントを授けていきます。
本書は答えを押し付けず、寓話を通じて考えさせる問いかけが
ギフトのように散りばめられており、
読者はサカモトたちと一緒に研修を受けている気持ちで楽しく読み進めながら、
自分の働き方を見つめ直すきっかけが得られます。
『藁を手に旅に出よう』のまとめ
サカモトの成長物語:寓話に隠れた教訓
物語は、新入社員サカモトが研修の場で石川人事部長と出会うところから始まります。
冒頭、石川さんは『うさぎと亀』を取り上げ、
サカモトたちに「そもそも亀は無謀な勝負を受けるべきだったのか?」と問いかけます。
普通なら「油断したウサギよりコツコツ努力を続けた亀が勝った」という
教訓と思いがちなところを、あえて覆すような新しい視点です。
無理な土俵で勝負するのではなく、自分の得意なフィールドを選ぶことの大切さ
戦略的に自分の強みを活かすことの重要性にサカモトは気付かされます。
また別の初期講義では、『裸の王様』の寓話から
「周囲の空気に流されること」の怖さを学びます。
人はつい多数派の意見や場の雰囲気に飲まれてしまいがちですが、
「空気」に負けないためには論理的な判断基準を鍛える必要があると石川さんは指摘します。
こうして序盤の研修では、「努力には正しい方向性が必要」
「流されず自分の頭で考える」といったキャリアの基本姿勢が示されていきます。
続く講義でも、寓話を使った示唆はさらに広がります。
『オオカミ少年』の話では、物事のリスク評価について考えさせられます。
石川さんは「難しい意思決定ほど、その場の空気から離れて客観的に考えるべきだし、
起きる可能性だけでなく起きた時のインパクトを見積もることが大事だ」と説きます。
軽視しがちな低い可能性のリスクでも、
起きた場合の損失が大きいなら対策を怠ってはいけないという教訓です。
そして『桃太郎』の講義では、ハーズバーグの動機づけ理論に触れながら、
何のために働くのかという「大義」の重要性が語られます。
桃太郎が仲間に与えたきびだんごは一時的な報酬に過ぎず、それだけでは人は動かない。
鬼退治という使命(大義)があるからこそ
仲間たちは危険を冒してまで付いて来たのだ、というわけです。
石川さんは「外的なご褒美だけで人は突き動かされない。
敵を倒すこと自体を目的にしてしまうとキリがない。
大切なのは『どんな世界を実現したいのか』という
ビジョンにつながる本当の大義だ」とサカモトに問いかけます。
サカモトは、自分の仕事の動機を改めて考え、
「なぜこの仕事をするのか」を自問するようになっていきます。
わらしべ長者の教え:手元の資源を活用する
物語の後半では、サカモトが入社3年目となり、
再び石川さんのキャリア研修を受ける場面が描かれます。
新人時代より現実を知ったサカモトに対し、
後半の講義ではより実践的かつ哲学的なテーマがバランスよく展開します。
例えば『北風と太陽』の寓話からは、
相手を動かすには相手の立場・目的を理解することが肝心だと学びます。
北風が乗客のコートを無理やり吹き飛ばそうとして失敗し、
一方太陽は相手が望む状況(暖かさ)を作って自らコートを脱がせました。
この違いを石川さんはプレゼンや交渉に例え、
「相手のニーズとこちらの目的とのギャップを埋めることこそが手段であり、
ただ自分のやり方を押し付けても人は動かない」と解説します。
また、タイトルにもなっている『わらしべ長者』の話では、
「手元にある藁(=自分の持つ小さな強み)でも、
それを活かして動いてみれば大きな価値を生み出せる」という教訓が提示されます。
最初は藁一本しか持たなかった男が目の前のチャンスに次々と挑戦し、
それを人の役に立つ形で差し出していった結果、
やがて富を掴んだこの物語は、キャリアにおいても
「今持っているスキルや経験を侮らず、一歩踏み出す勇気を持つこと」の大切さを教えてくれます。
石川さんはさらに、「価値を決めるのは自分ではなく相手だ。
自分の強みも、必要とされる場所に行けば何倍にも高まる」と語り、
サカモトに「自分の人生は自分で決める覚悟」を促しました。
受け身で与えられた環境に甘んじるのではなく、
自ら機会を探しに動く主体性が重要だと気付かされます。
さらに石川さんは、『浦島太郎』のエピソードにも言及します。
「浦島太郎はなぜ竜宮城に行ったのか?」という問いから、
目先の誘惑や現実逃避に流されて自分の時間を失ってしまう危険について考えさせます。
働き方のコツだけじゃなく、人生の意味も問う
後半のテーマのひとつである「自分の人生をどう生きるか?」という
哲学的な問いに通じるエピソードであり、
サカモトは自分のキャリアの舵を取るのは自分自身だという
当たり前でいて重要な真実に改めて向き合います。
ですが『アリとキリギリス』の寓話も新たな切り口で議論されます。
石川さんは「働き者のアリは遊んでいたキリギリスに
内心嫉妬しているかもしれない」と指摘し、
勤勉さだけではない幸せや充実の尺度について問いを投げかけます。
真面目に備えるアリと、今を楽しむキリギリスという対照的な二者を比べてみることで、
画一的な「正解」ではなく自分の価値観で人生を豊かにする大切さに気付かされます。
またこの議論の中で石川さんは、物事に対する姿勢として
野党思考と与党思考という概念を紹介しました。
何でも批評家的に安全圏から指摘するだけではなく、
自分が当事者(与党)だったらどうするかと考える視点を持つべきだという提案です。
他人任せにせず物事に主体的に向き合うことで、
初めて見えてくる解決策や成長のチャンスがあると教えてくれます。
さらに、アドラー心理学の
「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」という言葉を引き合いに出し、
人の課題と自分の課題を切り分ける「課題の分離」もアドバイスされました。
上司や他人の評価ばかり気にして振り回されるのではなく、
「それは自分の問題か、それとも相手の問題か」を見極めることで、
不要なストレスから解放され、自分のすべきことに集中できるというわけです。
最後の講義では、人生の目的とビジョンがテーマとなります。
石川さんは絵本『すてきな三にんぐみ』のエピソードを引き合いに出しました。
誘拐した女の子ティファニーに「その財宝をどうするの?」と問われた三人組の盗賊が、
初めて自分たちの使命について考え始める……という有名な場面です。
このエピソードから、石川さんはサカモトに「君はレンガの先に何を見るのか?」と問いかけます。
目の前の一つひとつのレンガ(日々の仕事)しか見えていない人と、
その先に建つ未来の建造物(自分なりの理想の姿)を思い描いて働く人では、
仕事の意義が全く変わってきます。
石川さんは「リーダーとは肩書きではなく、
自分にしか見えていない未来に向かって歩き続ける人のことだ」と説き、
サカモトに自分なりのビジョンを持つことの大切さを伝えました。
肩書きや目先の評価に振り回されず、
長期的で答えの出にくい自分の問いに向き合い続ける姿勢こそが、
本当のリーダーシップだというメッセージです。
ポジティブ vs ネガティブ・ケイパビリティ:答えを出す力と考え続ける力
また石川さんは、ネガティブ・ケイパビリティ
(すぐに答えが出ない不確実な状況を受け入れる力)という概念も紹介しました。
現代のビジネス社会ではすぐに成果を出す
「ポジティブ・ケイパビリティ」ばかりが重視されがちですが、
石川さんは「答えを急いではいけない」と強調します。
すぐには答えの出ない深い問い(「自分にとって幸せとは何か?」
「自分は何のために働くのか?」など)こそ、
焦らずにじっくり抱え続けて考えることで初めて見えてくるものがあるのです。
実践法の一つとして、自分の今していることの目的を
五段階ほど「なぜ?」と掘り下げてみることも提案されています。
途中で言葉に詰まったり、自分でも腑に落ちない答えしか出てこないとしたら、
それは今の行動が自分の本当の目的や価値観とズレているサインかもしれません。
さらに石川さんはキャリアの捉え方について、
「キャリアは竹のようなものだ。節目(成長の転機)があるからこそ強くしなやかになる」と例えました。
これは一直線に途切れなく伸びるのではなく、
時折の区切りや変化こそがキャリアに筋を通し、強度を増すという意味です。
そしてサカモト自身、これまでの経験の一つひとつを“星”に見立てて、
それらを線で結んで自分だけの星座を描くように
キャリアをデザインしていく発想を得ました。
点と点ではバラバラに見える経験も、後から振り返れば自分だけの専門性や強みを形作る
星座(ストーリー)になるという気づきです。
こうして12回の寓話のレクチャーを通じて、
サカモトは目の前の仕事の捉え方から人生の目的まで、
多角的に学び直し、自分なりの指針を見出していきます。
最後に
ここまで本書について紹介してきました。
本書は、寓話を用いた物語仕立てで
キャリアの大切なポイントを教えてくれる、優しくも奥深い1冊です。
石川人事部長の言葉は説教じみることなく、
読者に「自分だったらどうするだろう?」と考えさせる温かい問いを投げかけてくれます。
本書が気になる方は、是非手に取ってみてください!

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