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『パズルと天気』のあらすじと感想について

小説

こんにちは!しょーてぃーです!

今回は、伊坂幸太郎さんの

『パズルと天気』について紹介をしていきます!

 

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『パズルと天気』について 

本書の概要

本書はひとことで言うと

人と人の繋がりが優しく描かれた、温かな短編集です。

 

本書をオススメしたい人

・日常に潜む不思議な謎や軽妙な会話劇が好きな人

・短時間で読めて心がほっと温まる結末を味わいたい人

・伊坂幸太郎らしいユーモアを堪能したい人

 

本書は、世間伊坂幸太郎デビュー25周年を記念して刊行された短編集で

全5編から成り、「幸せ」をテーマにした不思議で温かな物語が収められています。

 

マッチングアプリでしか会えない名探偵、七夕まつりに現れたかぐや姫、

動物園で出会ったシロクマ好きの元恋人、犬たちが語り出す昔話、

そして結婚式で天気の話しかできなくなった男など

ジャンルはミステリーからユーモアたっぷりのSFや心に染みる人情劇まで多種多様です。

 

舞台は主に著者の地元・仙台を中心とした現代の日本で、

日常にさりげなく非日常が混ざり込む「伊坂ワールド」の魅力が

存分に味わえる1冊となっています。

 

巧みな伏線回収による爽快感と、読後に心がほっと温まる余韻が印象的な、

25周年にふさわしい集大成のような短編集です。

 

なお、一部の作品は過去にアンソロジー等で発表されていますが、

本書でまとめて読むことで全体を再解釈できる仕掛けも隠されており、

新たな感動が生まれる構成になっています。

 

『パズルと天気』のあらすじ

あらすじの概要

マッチングアプリで出会える「名探偵」、天気の話ばかりする男、犬たちの逆襲……不思議で温かい、伊坂マジックが詰まった短編集。

パズルと天気 より

 

パズル

そそっかしく失敗ばかりの“僕”は、マッチングアプリで出会った恋人の

朝田寧々(あさだ・ねね)と順調に交際しています。

 

しかしある日を境に寧々の様子が急によそよそしくなり、

周囲でも腑に落ちない出来事が起こります。

 

悩んだ僕は、マッチングアプリ上でしか会えないという

謎の名探偵・財音杏(ざいおん・あん)に相談を持ちかけます。

 

財音杏は短い会話の中から鮮やかな推理を展開し、

寧々の態度の裏に潜む意外な真相を突き止めます。

 

その後、物語は彼女の推理をきっかけに思わぬ方向へと捻じれていき、

予想もしなかった結末へと着地します。

 

最後にはパズルのピースがすべてはまるように謎が解き明かされ、

読者も「なるほど!」と膝を打つような爽快感が味わえます。

 

竹やぶバーニング

仙台の七夕まつりの喧騒の中、ひとりの女性から

「かぐや姫が入った竹を探してほしい」と奇妙な依頼を受けた“僕”は、

ホストの友人・竹沢不比人(たけざわ・ふひと)とともに祭りの会場を駆け回ります。

 

出荷予定の竹に竹取物語のかぐや姫が紛れ込んでしまい、

このままでは竹が開花して竹林が全滅する可能性があるというのです。

 

僕はその超常的な依頼に半信半疑ながら、

不比人は遠く離れた美女の姿を視認できる「美女ビジョン」という特殊能力の持ち主で、

一緒に竹を捜索するうちに状況はさらに奇想天外な展開を見せます。

 

次々と繰り出されるユニークな出来事に振り回されながらも、

やがて“僕”たちは雑踏の中から目的の竹を発見し、かぐや姫騒動に決着をつけます。

 

非現実的な設定を現代の祭りにしれっと紛れ込ませる作者の筆致が冴え渡り、

結末まで予測不能なストーリーを存分に楽しめます。

 

透明ポーラーベア

恋人の千穂(ちほ)と訪れた動物園で、

“僕”は偶然にも姉の元恋人だった富樫さんと再会します。

 

姉は恋人と別れるたびに旅に出る癖があり、

7年前にふらりと家を出て以来戻ってきていません。

 

富樫さんは新しい恋人を連れており、4人で他愛ない会話を続けるうちに、

行方不明の姉にまつわるある真実が少しずつ明らかになっていきます。

 

姉が大好きだったシロクマにちなむエピソードや富樫さんの複雑な想いを経て、

“僕”は姉の不在と向き合う覚悟を決めます。

 

イヌゲンソーゴ

犬をテーマにした異色の一篇です。

ある街で、一匹の犬が奇妙な男と出会った瞬間、前世の記憶がよみがえります。

 

その犬は昔話『花咲か爺さん』でおじいさんに可愛がられたあの犬だったのです。

 

同じように他の犬たちも次々と記憶を取り戻し、

ある者はブレーメンの音楽隊のロバ(実は犬が化けた姿) 、

ある者は桃太郎に退治された鬼(犬だった頃の記憶)という具合に、

自分たちが昔話の登場人物だったことに気付きます。

 

そして全ての元凶である「あの男は許せない!」と犬たちは結託し、

かつて自分たちをひどい目に遭わせた張本人にリベンジするための作戦を開始します。

 

犬たちの視点で進む群像劇はユーモラスで痛快ですが、

同時に人生の教訓めいた哲学も感じさせる不思議な味わいです。

 

童話のキャラクターを転生劇に仕立てた独創的な設定に、

思わずクスリとさせられつつも考えさせられる一作です。

 

Weather

天気の話ばかりする男・大友(おおとも)が主人公です。

 

その理由は、大友の学生時代からの親友・清水が

複数の女性と同時進行で交際する奔放な男だったため、

うっかり別の女性の話題を口に出してトラブルになるのを恐れ、

当たり障りのない天気の話しかできなくなってしまったからです。

 

そんな清水が「明香里(あかり)という女性と出会って性格を入れ替えた」と豪語し、

このたび結婚することになります。

 

ところが友人代表として結婚式に招かれた大友は、

式の直前、新婦の明香里本人から「清水の言動を挙式まで見張っていてほしい」と

内密にお願いされます。

 

新婦によれば、遊び人だった清水が更生したことは信じたいものの、

どうも彼の行動に隠し事がある気がしてならないというのです。

 

「もしかして、まだ切れていない女性でもいるの?」と不安を漏らす新婦に、

大友は渋々ながら協力を約束します 。

 

こうして迎えた結婚式当日、

清水が自分で手配したという会場のレストランにはどこか不自然な違和感が漂い、

大友は式の進行中も気が気ではありません。

 

やがて披露宴のクライマックスで

清水にまつわる思いもよらない事実が明らかになり、彼の隠し事の正体が判明します。

 

その瞬間、大友の心配は杞憂に終わり、

晴れて清水と明香里は真に心を通わせる夫婦として新たな一歩を踏み出します。

 

『パズルと天気』の感想

心をそっと再起動してくれる五つの物語

本作をを読み終えてまず感じたのは、読後の穏やかな幸福感です。

 

「謎解きがあって最後はほっこり」という全体の流れが一貫しており、

5編すべてを通じてクスッと笑えて、じんわり心が温まる作品ばかりでした!

 

日常の延長線上にある不思議な出来事が描かれる本作では、

各短編にちりばめられた伏線が軽やかに回収されていき、

読者は肩肘張らず物語世界に身を委ねることができます。

 

そのバランス感覚は絶妙で、まさに「読むことが休息になる」ような心地よさでした。

 

本書のテーマである「幸せ」は様々な形で表現されていますが、

特に印象的なのがタイトルにもなっている「パズル」と「天気」の対比です。

 

著者自身、「頑張ればどうにかなる“パズル”と、頑張ってもどうにもならない“天気”」という言葉で

両者の性質を語っています。

 

自分の努力で解決できることもあれば、祈るしかないこともある

 

一見正反対のようですが、

どちらにも「良くあってほしい」という前向きな願いが込められている点で

共通しているのではないかと思いました。

 

実際、各物語では登場人物たちが精一杯に悩み、もがき、

時には運に身を任せつつも最終的には小さな幸せを掴んでいきます。

 

その姿は読む者に爽やかな勇気を与えてくれ、

「人生も捨てたものじゃない」と思わせてくれる温かな余韻を残します。

 

中でも、ラストの「Weather」で清水の気遣いには思わず胸が熱くなりました。

 

普段お調子者の彼が静かに放ったその台詞は、

物語を通して清水の姿を見守ってきた読者の心にじんわりと染み渡り、感動を呼び起こします。

 

物語づくりの妙技も存分に味わえる短編集でした。

 

たとえば「イヌゲンソーゴ」で犬たちが語り手となる趣向は、

かつて車が語り手を務めた『ガソリン生活』を彷彿とさせ、

伊坂作品らしい遊び心にニヤリとさせられました。

 

一方、「竹やぶバーニング」のように

現代の街中に昔話の要素を溶け込ませる手腕や、

「パズル」でのマッチングアプリ探偵と完全数トーク、

「透明ポーラーベア」でのシロクマ雑学など、

随所に挟まれる会話劇も軽妙でクスッと笑えます。

 

何気ないやり取りが後の伏線になっていたり、

奇抜な設定が最後には必然性を持って収束したりする展開には、思わず感嘆しました。

 

伊坂さんの作品には毎回「こんな世界アリなのか?」と思わされる独特の設定が登場しますが、

それでもいつの間にか読者はその世界観に引き込まれてしまいます 。

 

本書でも、マッチングアプリでしか会えない名探偵や前世の記憶に目覚める犬など、

ユニークすぎる設定の数々に最初は驚かされるものの、

物語の中では不思議と違和感なく受け入れてしまう自分がいました。

 

それこそが「伊坂ワールド」の真骨頂であり、

独創的な設定とキャラクターが織りなす唯一無二の物語世界に没頭できるのが

伊坂作品の醍醐味だとあらためて感じます。

 

デビュー25周年という節目で発表された本作は、

過去のアンソロジー収録作も含めて

伊坂幸太郎さんのエッセンスが凝縮された「入門編」のような1冊でもあります。

 

伊坂作品をあまり読んだことがない方でも、

肩肘張らずにその魅力を味わうことができるでしょうし、

久しぶりに伊坂ワールドに浸かりたいというファンにとっても、満足度の高い作品集だと思います。

 

なお、本書の巻末には「各短編について」と題した、著者自身の解説が収録されており、

それぞれの作品をどんな経緯・狙いで執筆したのかが語られています。

 

創作秘話を垣間見られるこのおまけページも、ファンには嬉しいポイントでした。

 

最後に

ここまで本書について紹介してきました。

 

読後にぽっと心に灯りがともるような温かい余韻を与えてくれる作品でした。

 

伊坂幸太郎さんならではのユーモアと人情味あふれる物語が詰まった本作は、

忙しい日々の中で小さな幸せを思い出させてくれる心地よい1冊だと思います。

 

本書が気になる方は、是非手に取ってみてください!

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