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『列』のあらすじと感想について

小説

こんにちは!しょーてぃーです!

今回は、中村文則さんの

「列」について紹介をしていきます!

 

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『列』について 

本書の概要

本書はひとことで言うと、

現代社会の苦しさを描く不条理小説です。

 

本書をオススメしたい人

・不条理な物語が好きな人

・哲学的で重い話が好きな人

・中村文則さんが好きな人

 

本作は3部構成となっています。

 

第1部は、ただ列に並んでいるだけの男の物話で

列は複数存在するようですが

先頭はまったく見えず、最後尾も不明です。

 

列にいつから並んでいて、何のために並んでいるのかなどの

理由や意味は一切語られないまま物語が進みます。

 

第2部は、猿の生態について研究をする非常勤大学講師の男が

猿と人間とを比較し、知性・悪・道徳・社会を通して

生きることのあり方について考える物語です。

 

第3部は、再び列の話に戻り

男が猿の研究者としての生き方を考える話です。

 

本書では、人間の苦しさを「列」と表現しており

人生の比喩として描かれています。

 

長い人生の列では、順番を待ちきれなかったり

待つことの虚しさに耐えられずに

エゴを剝き出し、小競り合いを繰り返します。

 

また、あらゆる列から外れ、ドロップアウトすることは可能ですが

列を拒否しても、無意識のうちにどこかの列に並んでしまってます。

 

知性のある人間が、同種同士で争い

倫理に欠けた愚かな存在であること

備わっている知性や道徳はどこにいったのかなど

著者の素朴な疑問が読者の胸に突き刺さります。

 

中村文則さんの作品らしい哲学的かつ重苦しい物語であり

社会の苦しさの根源を追求している物語です。

 

『列』のあらすじ

あらすじの概要

だれも列からは逃れられない――。『銃』や『掏摸』『教団X』につらなる……中村文則の最高傑作誕生!

「君だって、列に並びたいから、並んでたんだろ?」

ある動物の研究者である「私」はいつのまにか「列」に並んでいた――。

先が見えず、最後尾も見えない。だれもが互いを疑い、時に軽蔑し、羨んでいる。

この現実に生きる私達に救いは訪れるのだろうか。

「あらゆるところに、ただ列が溢れているだけだ。何かの競争や比較から離れれば、今度はゆとりや心の平安の、競争や比較が始まることになる。私達はそうやって、互いを常に苦しめ続ける」(本文より)

講談社BOOK倶楽部  より

 

第1部の概要

主人公の前には藍色のスーツの男、後ろには蟹に似た男が並んでおり

前後には、先端が見えないほどの列に「私」は気付いた時から並んでいます。

 

なぜ列に並んでいて、自分が何者なのかの記憶をなくしていました。

 

他者より1歩でも先に進みたい

この列から離れて逸脱したくないなど

様々なトラブルが起こりながらも、固執して列に並び続けようとする私です。

 

第2部の概要

猿の生態を研究している大学の非常勤講師である草間は

大学院生の石井と一緒に猿の群れを観測し続けています。

 

非常勤講師という不安定かつ低収入な立場であり

革新的な論文を発表しようと試みる草間は

猿の行動を観察しながら、そこに人間の行動原理を見出そうとします。

 

猿と人間は進化の過程や遺伝子が非常に似ています。

 

しかし野生の猿は、群れのなかに優劣を作らず

「ボス猿」のような階級は、動物園などの

人間の飼育課に置かれたときにだけ生まれる状態です。

 

第3部の概要

物語はまた「列」に並んでいる男の話に戻ります。

 

ですがその男自身は草間であり

草間が自身の生き方について考える話です。

 

第1部と第2部が重なり、中村文則さんの考えが溢れ出ます。

 

『列』の感想

読者によって受け取り方が大きく変わる作品

本作は、読む人の状況や環境によって

感想が大きく変わるなと感じました。

 

本書での「列」は、読者によって

会社での立ち位置・年収・婚活市場での需要

YouTuberの登録者数・SNSのフォロワー数など

あらゆる側面においても、序列がつけられることを意味しています。

 

また、流行りの店や新作商品の販売に並ぶ物理的な「列」もあり

社会ではあらゆる「列」に並ばざるを得ない状況を

誰もが受け容れざるを得ないということです。

 

自分より前にいる者が先に目的地に着いて

後ろにいる者は自分より遅れて着きます。

 

そういうルールで、なにかの順番を待ち

人によってはどんな手を使っても列に割り込む人もいれば

列に並ぶことに耐えられずドロップアウトし

無意識に別の列に並んでいる人もいます。

 

結局どこに行っても、列の途中であり

自分が並んでいる列の先頭にいる人は

違うの列の途中かもしれないこともあります。

 

この世界は列でできており

列の存在によって私たちは心苦しくなっていることを本作を通じて私は感じました。

 

猿の研究から学ぶ人間について

第2部では、草間が、猿の行動学を研究しており

非常勤講師で不安定な収入ながらも食いつなぐ彼は

知り合いの教授に頼まれて、雪山の野生の猿群を観察しています。

 

草間は猿の行動を観察しながら、そこに人間の行動原理を見出そうとします。

 

野生の猿は、群れのなかに優劣を作りませんが

動物園などの人間の飼育課に置かれたときに優劣が生じます。

 

自然状態においては餌や配偶者を取り合うこともなく

猿たちは緩やかな関係性のうちに暮らしています。

 

猿とは違い人間は、備わっている知性や道徳や理性などが

気づけば競争社会や弱肉強食の社会を生み出しています。

 

中村文則さんの物語は

漠然と抱く劣等感や優越感をとても繊細に捉えていて

その上で結論を押しつけるのではなくありのままで並べています。

 

多様性だの聞き心地のいい言葉で謳われている社会ですが

自分も逃げているようで気づかないうちに

違う列へと参加しているんだろうなと感じました。

 

最後に

ここまで本書について紹介してきました。

 

不条理な社会を描いた本作は

短いページながらも、読んでいて圧倒されました!

 

本書が気になる方は

是非本書を手に取ってみてください!

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