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2022年本屋大賞ノミネート作品 『正欲』のあらすじと感想について

小説

こんにちは!しょーてぃーです!

今回は朝井リョウさんの

「正欲」について紹介します。

 

本書の印象に残った部分や

感想を記載していきます。

 

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『正欲』について

本書の概要

朝井リョウさんの

作家生活10周年記念作品になります。

 

著者ご本人も、下記のように仰っています。

「小説家としても一人の人間としても、

明らかに大きなターニングポイントとなる作品です。」

引用元:正欲 

 

著名人をはじめとする、多くの書店員さんからの

「衝撃」を物語る感想が多く寄せられています。

 

本作からは、

人間の欲望や社会の眼差しといったものについて、

物凄く考えさせられる作品であります。

 

本書をおすすめしたい人

・朝井リョウさんがお好きな方

・話題作を読んでみたい方

・小説を通じて考えさせられる体験をしたい方

 

朝井リョウさんの作品は毎度のごとく、

読者の期待を大幅に超えてきます!

 

毎回新作がすごい作家さんって

本当にすごいな!と感じました。

 

「正欲」についてのまとめ

本書を一言で述べると、

「多様性」という風潮にすら

受け入れられない人たちの群像劇です。

 

登場人物は、結構出てくるのですが

物語の前半部は以下の3人の話がメインになります。

 

・息子が不登校になった検事・啓喜

・ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月

・初めての恋に気づいた女子大生・八重子

 

啓喜について

啓喜は、息子の不登校について、

妻と考え方が異なります。

 

妻は「不登校でも息子が元気でいればいい」という

スタンスなのですが、啓喜は違います。

 

検事という職業柄

社会のレールからはみ出た人を沢山見てきた啓喜は、

「不登校」という

社会のレールから外れそうな状態である息子に対して

人一倍、危機感を感じます。

 

息子を心配する気持ちは妻と同じでも、

「通常ルートに戻したい」という強固な気持ちを持っています。

 

そんな中、息子はとあるYouTuberにハマってしまいます。

「学校ってもう古くないですか?

 もっと自分が興味あることを勉強した方が絶対にいい!

 僕から見れば、みんな洗脳されてるみたい。

 学校の勉強、社会でて、役に立つの?」(p23)

 

このゆたぽん的なYouTuberの影響を受けてしまい、

NPO法人で出会った、

同じ不登校の状態である男の子2人と一緒に

YouTuber活動を始めます。

 

この活動に啓喜は難色を示しますが、

妻はめっちゃ応援します。

 

夏月について

寝具販売員の桐生夏月は、

地元岡山のショッピングモールで

布団販売をしている独身女性です。

 

性格は結構冷めた感じのキャラクターで、

世の中に対して客観的に冷めているような考えでいます。

 

なぜそのような考えになったのか・・・

実は彼女、マイノリティ中のマイノリティなのです。

 

何がマイノリティ!?ってなってしまいますが

ネタバレに大きく関わってきますので伏せます。

 

ただ、「夏月の抱える秘密」「マイノリティであること」

この2つが物語と密接に関わっていきます!!

 

八重子について

女子大生の神戸八重子は学祭の実行委員です。

実行委員としてミスコンを大反対しており、

「ダイバーシティフェス」というものを開催しようと考えています。

 

八重子はあることをきっかけに、

引きこもりの兄に対して嫌悪感を抱き、男性恐怖症になります。

 

しかし、ダンスサークルに所属している諸橋大也にだけは

なぜか恐怖を感じない存在であり、好意を抱いています。

 

ただ、八重子自身は

男性恐怖症でありながら、異性愛者なので

自分がマジョリティに属していることを自覚してます。

 

異性愛者の場合だと、恋愛→結婚などの、

次への選択肢がありますが

LGBTのようなマイノリティの方々は、

恋愛から次への選択肢が少ないため

選択肢の少なさに生き辛さや苦しみを感じます。

 

ただ、八重子の場合は

男性恐怖症ながらマジョリティに属しており、

「選択肢がある」という状況に辛さを感じます

 

この3人が繋がっていく・・・

不登校の息子を持つ啓喜、

秘密を抱える夏月、

男性恐怖症の八重子の

全く接点のない3人と、その周囲の登場人物が

ある人物の事故死をきっかけに、繋がっていきます。

 

ただこの繋がりは、「多様性を尊重する時代」にとっては

ひどく不都合なものだったのです!!

 

多様性というテーマについて

本書のは「多様性」という言葉がテーマとなっています。

多様性と言っても、

性的指向の多様性についてがメインテーマです。

 

一般的な多様性のイメージだと

「人種、性別問わずいろんな価値観を認めていこう」といったような

自由であるようなイメージですが、

 

本書の中では登場人物の一人が以下のように述べている場面があります。

「お前らが大好きな多様性って使えばそれっぽくなるような魔法の言葉じゃねえんだよ

自分にはわからない、想像もできないようなことがこの世界にはいっぱいある。

そう思い知らされる言葉のはずだろ」(P337)

 

本来、多様性というものは

「自分の想像を絶するようなことや、

 理解し難い思想や性質があるということを

 突き付けられることであり、苦しいことだ」ということを

朝井さんのキレのある世界観で表現されています。

 

私も「多様性」という言葉については

ポップなイメージだったのですが、

本書を読むことで、

自分自身の価値観や思考範囲の狭さを突き付けられました・・・(笑)

 

確かに、「多様性」と言いながら、

「常識だったり自分が正しいと思う方向に

 結論を持っていきがちな風潮だなー」と気付かされました。

 

最後に

ここまで本書の一部を紹介してきました。

 

読了後は、普通を生きることから、はみ出た人や

同調圧力のなかの孤独感をすごく感じます。

 

また「多様性」という言葉の広さと重さを痛感しまい、

人間の性格や生き方を

「多様性」という一言で括れない程の

深さとエグさを見せつけらます。

 

多様性という言葉に違和感を持った方は

朝井さんのキレのある世界観に飲み込まれます。

 

本書が気になられる方は、ぜひ手に取ってみてください!

 

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