こんにちは!しょーてぃーです!
今回は、小川哲さんの
『君が手にするはずだった黄金について』について紹介をしていきます!
『君が手にするはずだった黄金について』について
本書の概要
本書はひとことで言うと
小説家の考えを具現化した短編集です。
本書をオススメしたい人
・何気ない出来事が好きな人
・哲学的な考えが好きな人
・本屋大賞2024にノミネートされた作品が気になる人
本作品は、6編から成る短編集であり
6編とも著者自身が主人公であり、身の回りで起きた出来事をきっかけに
自身の考えや価値観を語っていく物語です。
何気ない日常を主人公の物の見方、考え方によって
それが面白く捉えられたり、感慨深いものになっています。
主人公が小説を書くようになった経緯や
東日本大震災の時の記憶を通して、人間の記憶の曖昧さなどを語ったり
占い師や詐欺師、偽物についてだけでなく
最終的には小説家についても描かれています。
非常に奥の深い作品集であり、常に考えさせられる短編集となっています。
『君が手にするはずだった黄金について』のあらすじ
あらすじの概要
認められたくて、必死だったあいつを、お前は笑えるの? 青山の占い師、80億円を動かすトレーダー、ロレックス・デイトナを巻く漫画家……。著者自身を彷彿とさせる「僕」が、怪しげな人物たちと遭遇する連作短篇集。彼らはどこまで嘘をついているのか? いま注目を集める直木賞作家が、成功と承認を渇望する人々の虚実を描く話題作!
各章のあらすじの概要について
プロローグ
大学院生の「僕」は就職活動のエントリーシートで手が止まった。「あなたの人生を円グラフで表現してください」 僕はなんのために就職するのだろうか? そこに何を書くべきなのか、さっぱりわからなくなった僕に、恋人の美梨は言う。「就職活動はフィクションです。真実を書こうとする必要はありません」
小川さんの就活中のエントリーシートについてのお話から
最終的に小説家としてデビューし、恋人との出会いから別れまでの話が描かれています。
エントリーシートについてここまで考えたことがないうえに
就活をする理由から人生の選択についてまで
学生時代にまったく考えていなかった私にとって1ページ1ページが楽しみでした。
「プロローグ」については、試し読みとして全文公開されています。
三月十日
東日本大震災から3年後の3月11日、僕は高校の同級生たちと酒を飲んだ。あの日、どこで何をしていたか――誰もが鮮明に憶えているのに、前日の3月10日については、ほとんど憶えていない。僕はその日、何かワケあって二日酔いになるほど飲んでいたらしいのだが……失われた一日の真相とは?
東日本大震災があった2011年3月11日の
前日は何をしていたのかを思い出そうとする話です。
震災のあった当日のことなら詳細に覚えていますが
前日のこととなると、まったく思い出せませんでした。
震災当日の行動から前日のことを推測しますが、どうも辻褄が合わず
自分の都合のいいように出来事を変えている可能性もあると考えるようになります。
人間の記憶が非常に曖昧であることから
地震に限らず、明日何が起きるかわからないので
今を精一杯生きようと思える物語でした。
小説家の鏡
博士課程に進み小説家になった僕に、高校時代の友人西垣から相談が持ち掛けられた。「妻が小説を書きはじめ、仕事を辞めて執筆に専念したい」と言い出したという。しかも青山の占い師のお告げに従って。友の頼みとあって、インチキを暴こうと占い師に接近する僕に、思いもかけない「その瞬間」が訪れる。
高校の同級生の妻が占い師にハマったことで
会社を辞めて小説家になると言いだしました。
その占い師のインチキを暴き、洗脳を解こうとする物語です。
同級生と2人で作戦を練り、それぞれが別人となり占ってもらうようになりますが
占い師によるトリックの解説や、ハマってしまう流れについて詳細に描かれています。
君が手にするはずだった黄金について
片桐は高校の同級生。負けず嫌いで口だけ達者、東大に行って起業すると豪語していたが、どこか地方の私大で怪しい情報商材を売りつけていたらしい。それが今や80億円を運用して六本木のタワマンに住む有名投資家。ある日、片桐のブログはとつぜん炎上しはじめ、そんな中で僕は寿司屋に誘われる……。
高校の同級生である片桐が、詐欺を働くようになった物話です。
何者かになりたかった人が何者にもなれずに取り繕うあたりや
それに群がる何者かになりたい者や叩く者、
ネタにする者、被害を受ける者などから指を刺され
承認欲求を満たすために、疲弊していくんだろうなと感じる作品です。
偽物
新幹線のグリーン車で偶然再会したババリュージという名の漫画家。人の良さそうな痩せた男で、僕は彼に好感をもっていたのだが、一緒にいた轟木は正反対のことを言う。「あいつはヤバい奴だね。偽物のロレックス・デイトナを巻いているから」。他人を見た目で判断するなよ。いや、かくいう僕はどうなんだ?
ババリュージという漫画家の話で
ババは、ロレックスの偽物の時計を付けていました。
それを見た同級生は、ひと目見ただけで信用できないなど散々なことを言います。
「ババさんみたいなタイプってこと?」見た目や身につけているものだけで
勝手に他人を判断してしまっていることを痛感する一方で
あながち間違っていないからこそ
そう判断してしまっていると考えてしまう自分がいました。
受賞エッセイ
僕は31歳になり、山本周五郎賞最終候補の報せを受けた。だがその日、僕は不思議な電話を度々受けることになる。「アメリカのデパートで買物をしましたか?」。そして見知らぬ番号からの電話に折り返すと、「どちらの小川さまですか?」 僕はどちらの小川なのだろう。そもそも僕は何者なのだろう?
著作が山本周五郎賞の最終候補になった話と
クレジットカード詐欺にあった話と小説が出来上がるまでの物語です。
著者の1番哲学的な部分が垣間見れる作品であり
小説家が、自身の存在について悩んでいるということが伝わってきます
各章の引用元:新潮社特設サイト
『君が手にするはずだった黄金について』の感想
小説家の考えに触れられる作品
本作の物語の構成として、主人公の著者が
日常で起きた出来事をきっかけに、ひたすら一人称視点で描かれています。
特段大きな事件が起きたりすることはありませんが
独りで色々と感じたり考えたりしており
描写が細かいことから登場人物のキャラ話がリアルなだけでなく
その考えや感情が読者に対して濃く入ってきます。
個人的には表題作である「君が手にするはずだった黄金について」と「偽物」が印象に残っており
偽物のブランド品を身につけたり、自分を偽り盛りに盛ってSNSで見栄を張ったり
承認欲求を得たいがために、自分がなりたい自分になろうと
必死に虚像を演じている登場人物にリアルさを感じました。
現実世界でも「いくら稼いだ」だの「高級車を持っている」など
本当か嘘かわからないような情報に対して
承認欲求に飢えている人がもがいたり、信じたり
妬みからアンチ活動をしている人が一定数いるなーと感じました。
「真実とは何か」「何が本当で何が嘘なのか」
「そもそも本物とは何か」「自分が信じてるものは真実なのか」と
振り回されている人の姿を真面目かつ滑稽に描かれています。
最後に
ここまで本書について紹介してきました。
小説家の考えや感情に触れられる作品であり
非常に読者が考えさせられる作品でもありました!
本書が気になる方は
是非本書を手に取ってみてください!
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