こんにちは!しょーてぃーです!
今回は、中室牧子さんの
「学力」の経済学 について紹介をしていきます!
「学力」の経済学 について
本書の概要
本書は、慶應義塾大学の教授であり
教育経済学の学者である中室牧子さんによる
教育や子育てについて書かれた1冊です。
これまで教育について
教育学者や学校の先生や塾の先生をはじめとする
経験談で語られてきました。
しかし本書では
統計学的な手法を用いた調査と分析した結果からの
「教育学」について解説された1冊です。
本書をオススメしたい人
・データに基づいた教育が知りたい人
・科学的根拠のある教育方法が知りたい人
・教育についてのデータが知りたい人
「教育経済学」とはざっくりいうと
データに基づいて教育に
経済学の要素を入れ込んだものです。
そして本書では
データに基づいた教育を
経済学的な手法で分析した
教育経済学が紹介されています。
実験や理論などが様々紹介されていて
科学的な根拠に基づいた解説がされた1冊です。
本書を通じて
子育てについての間違った解釈や
誤った知識がアップデートできるとても貴重な1冊です。
「学力」の経済学 の要約
他人の「成功体験」を自分の子に生かせるのか?
近年の日本の教育現場では
データによる根拠が非常に軽視されていて
教育者や政策立案者などの
主観的な経験によって教育が行われています。
一方、アメリカでは
「落ちこぼれ防止法」による教育政策というものによって
科学的根拠を重視しています。
この政策は、各州の学区・学校に対して
テストの結果を到達目標として設定され
目標基準値を達成できなかった学校や教員に
制裁措置を行い、改善要求を行う政策です。
言わば「アメとムチ」のような政策ですが
この政策の大多数が成功に至りました。
メリーランド州にある小学校では、
州の学力テストにおいて
リーディングと数学で100%の生徒が
「良」という成績を取得する快挙が起きました。
この事例から
これからの日本の教育政策を考えるうえで
個人の主観的経験から生まれる政策より
科学的根拠に基づく教育政策が
重要だということが分かります。
子どもをご褒美で釣ってはいけないのか。
経済学用語で
双曲割引という考え方があります。
それは、 人間は遠い将来のことは
冷静に考えて賢い選択ができるが
近い将来のことだと
たとえ小さくてもすぐに得られる満足を優先する性質のことです。
例えば、
来年の正月のお年玉に10000円もらうか
来年の1週間後に15000円もらうか
あなたはどちらを選びますか?と聞かれると
迷わず後者を選ぶと思います。
しかし、今日1万円もらうか
1週間後に10500円もらうか
どちらを選びますか?と聞かれると
今日1万円をもらう方を選ぶ人が多いでしょう。
これが双曲割引という考え方です。
つまり、人間のもつ「物事を先送りにする特性」を抑えて
子供の将来に役に立つ勉強に向かわせる方法として
「ご褒美」は正しいです。
教育経済学には「教育の収益率」という概念があり
1年間の教育的な投資は株や債権などの
金融資産への投資と比べても高いことが
多くの研究で判明しています。
子供の学力向上のために有効なのは
インプットに対して与えるご褒美です。
ハーバード大学のフライヤー教授は
子供に対するご褒美と学力の関係性を研究しました。
具体的には、インプットに対するご褒美と
アウトプットに対するご褒美の比較です。
インプットに対するご褒美は
本を1冊読んだらご褒美をあげる
宿題を終わらせたらご褒美をあげるなどのように
本を読む・宿題を終えるなどの
結果を出すための過程に対してご褒美をあげることです。
反対にアウトプットに対するご褒美は
テストで良い点を取ればご褒美をあげる、のように
テストや通知表などの、結果に対してご褒美をあげることです。
これら2つを比較した結果
学力テストの結果が改善したのは
インプットに対するご褒美でした。
特に、読書に対するご褒美を与えられた子供たちの
学力の上昇は顕著でした。
このような結果になった理由は
アウトプットに対してご褒美を渡された子供は
本質的な学力の向上につながる工夫を
実行しなかったからです。
アウトプットに対してご褒美を渡された子供は
もっとたくさんのご褒美をもらうためには
- しっかり問題文を読む
- 解答欄を見直す
などテストを受ける際のテクニックばかり考えていました。
つまり、テストで点数を取るために直結する
- わからないところは質問する
- 授業に出席して理解する
などの学力が直接身につく方法を重要視しませんでした。
勉強はそんなに大切なのか
私たちが学校に行って学べるものは
非認知機能 という能力です。
非認知能力とは
一般的には「生きる力」などと言われていて
人間の気質や性格的な特徴のことです。
社会の中で生きていくために必要であり
数値化できない能力のことです。
これまでは、学校でも企業の面接でも
偏差値やIQなどの数値ばかりが重視されていました。
しかしいくら学力が高くても
非認知能力が低いことから
人としての忍耐力や
コミュニケーション力が乏しいと
社会に出て柔軟に対応することは難しいです。
逆に、非認知能力の高い人は
最初は知識不足だったり経験不足でも
周囲の意見を取り入れて
学ぶ意欲を持ち続けることで
できなかったことも出来るようになるような
伸び代が大きい人材です。
近年、非認知能力は
将来の所得やキャリアの成功にも影響すると
多数の研究結果で指摘されています。
そして非認知能力を身に付けるためには
人から学んで、獲得するものであることから
学校へ行く最大の理由になります。
少人数学級のコスパは悪い
著者自身、少人数学級は
学力の向上に対する効果はあるが
コスパが極めて低いと述べています。
少人数学級のような
お金のかかる政策ではなく
もっと安価な手段で学力をあげることは可能です。
学歴と年収のデータから出せる
教育収益率を考えることで
生徒の学力向上につながると述べています。
つまり、親の学歴や年収などデータをもとに、
生徒の知能指数や親からの教育的投資額などを
考慮することが大切です。
なぜなら学力は
「家庭の資源」と「学校の資源」から成り立つからです。
「家庭の資源」が塾などで
差が付いてしまうのは当たり前です。
そこで、平等な学校教育をやめて
「学校の資源」を重視し
「家庭の資源」が少ない生徒に焦点を当てることで
全体として成績向上に繋がるということです。
また現在、日本の教育支出は
15年間で20%以上も減少しています。
この理由として、過去日本が実施した
教育政策の費用対効果が
科学的に検証されて来なかったことです。
費用対効果のデータを
日本も教育現場において採取し
エビデンスを日本の教育政策に
もっと組み込んでいくことが大切です。
最後に
ここまで本書について紹介してきました。
非常に面白い1冊であり
ここまで教育についてデータ化された書籍は斬新でした!
本書が気になる方は
是非手に取ってみてください!
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