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『まず良識をみじん切りにします』のあらすじと感想について

小説

こんにちは!しょーてぃーです!

今回は、朝倉秋成さんの

『まず良識をみじん切りにします』について紹介をしていきます!

 

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『仕事を人生の目的にするな』について 

本書の概要

本書はひとことで言うと

日常の歪みを鋭く描いた現代社会の風刺劇のような作品集です。

 

本書をオススメしたい人

・社会の不条理や矛盾を考えたい人

・ユーモアと風刺の効いた物語が好きな人

・短編且つ深いテーマを掘り下げたい人

 

本作は、現代社会の倫理観や

人間関係の歪みを鋭く風刺した5つの短編から成る作品集です。

 

不条理な状況や滑稽な出来事を通じて、

日常生活の中に潜む人間の弱さや社会の圧力が浮き彫りにされます。

 

復讐や集団心理、流行への同調圧力、親の責任感など、

幅広いテーマがユーモアと鋭い視点で描かれ、読者を考察と不安に引き込む内容となっています。

 

また、著者特有の軽妙な語り口が、現代人が抱える矛盾や葛藤を際立たせ、

日常に潜む不条理を楽しみながらも深く考えさせられる1冊です。

 

『まず良識をみじん切りにします』のあらすじ

あらすじの概要

隠し味に気付いたら、もう今までの生活には戻れない。

世界にはまだまだ明らかになっていない秘密があります。正しい恨みの晴らし方とか、行列に並ぶ最良のタイミングとか、披露宴でやってはいけない余興とか、裏切り者に見える男が覗き込んだ深淵とか、あなたにもっともふさわしい名前とか――。ここに、そのヒントがあります。気付くも気付かないも、あなた次第です。

まず良識をみじん切りにします より

 

日常の狂気を映し出す5つの短編集

本作は、現代社会の倫理観や人間関係を鋭く風刺した5編の短編から成る作品集です。

 

「そうだ、デスゲームを作ろう」

食品会社の営業部門で働く花籠は、

得意先の担当者・佐久保から理不尽な仕打ちを受け続けていました。

 

限界を迎えた花籠は、全財産を投じて一軒家を購入し、

佐久保に対してデスゲームを仕掛けることを決意します。

 

彼は自らの手で密室を作り上げ、佐久保に恐怖と絶望を味わわせることで、

自身の受けた傷を思い知らせようとします。

 

しかし、その計画は次第に予想外の展開を見せ始めます。

 

「行列のできるクロワッサン」

吉祥寺に住む専業主婦の絵美は、商店街に新しくオープンしたクロワッサン専門店

「ブーランジェリー・イゴル・エディ」の前に長蛇の列ができているのを目にします。

 

当初、彼女と友人たちは「クロワッサンで並ぶなんて」と嘲笑していましたが、

次第にその行列に引き寄せられていきます。

 

やがて、絵美自身もその行列に並ぶことになり、

同調圧力や流行に流される人々の心理が浮き彫りにされます。

 

「花嫁が戻らない」

結婚式の最中、花嫁が控室に籠城し、式が中断される事態が発生します。

 

新郎側の出席者である「僕」は、

花嫁が「気色の悪いものがあって気分が悪い」と言っていることを知ります。

 

参列者たちは花嫁を怒らせた原因を探し始め、

手品を披露した男性やダンスを踊った友人たちが次々と非難の対象となります。

 

犯人探しはエスカレートし、やがて会場全体が混乱に陥ります。

 

「ファーストが裏切った」

プロ野球チームのファーストが試合中に信じられないミスを犯します。

 

さらに信じられないようなミスを意図的にしているかのように犯し続け

チームメイトたちはその理由を理解できず、困惑します。

 

物語は、彼の内面やチーム内の人間関係、

そしてプレッシャーや期待がどのように彼の行動に影響を与えたのかを描き出します。

 

「完全なる命名」

子どもの命名を任された父親は、

その名前が子どもの将来に与える影響を深く考え始めます。

 

真面目な名前でもキラキラネームでも、

どのような名前をつけても悪い結果を招くのではないかと妄想し、悩み続けます。

 

彼の過剰なまでの思考は、命名という行為の重さと親の責任を浮き彫りにします。

 

『まず良識をみじん切りにします』の感想

ユーモアと風刺が織りなす現代の寓話

本作は、日常の中に潜む人間心理や社会の矛盾を鋭く描き出した短編集です。

 

一見奇抜で非日常的な状況を舞台にしながらも、

その根底には、現代社会における「普通」や「常識」とされるものへの違和感を表現しています。

 

読者はその違和感と向き合わされる中で、

自身の価値観や社会の在り方について思わず考えさせられます。

 

各章では、個人の内面に潜む不安や社会からの圧力、

そしてそれらが引き起こす奇妙な行動が描かれています。

 

「そうだ、デスゲームを作ろう」の復讐心に燃える主人公や、

「行列のできるクロワッサン」で流行に流される人々の心理は、

現実社会におけるストレスや集団心理を象徴しています。

 

これらの作品を通じて、現代人が抱える抑圧や、

社会が個人に課す見えない枠組みを浮き彫りになっています。

 

また、これらの物語は単に「社会の歪み」を指摘するだけではなく、

それに直面する人々の滑稽さや脆さを描きます。

 

「花嫁が戻らない」では、犯人探しがエスカレートする中で

集団心理の恐怖と、そこに潜む滑稽さが際立ちます。

 

このような描写を通じて、「他者を責めることで得られる安心感」や

「責任の押し付け合い」などの人間の本質的な弱さがあぶり出ています。

 

さらに、短編集全体を通して感じられるのは、

現代社会が抱える問題をユーモアで切り取っているところです。

 

シリアスなテーマでありながら、語り口には軽妙なユーモアがあり、

それが読者にとってこの作品を単なる暗い社会批判ではなく

エンターテインメント性の高い作品として成立させています。

 

本作は、読者に人間の本質や社会の在り方を再考させる作品であり

一見すると無稽に見える物語の中に、自分自身や現代社会の歪みが見え、

単なるフィクションを超えた「鏡」として機能しているといっても過言ではないです。

 

最後に

ここまで本書について紹介してきました。

 

読後は、爽快感というよりも、

じわじわと広がる問いかけが残り、心に深い余韻を刻みます。

 

本書が気になる方は

是非本書を手に取ってみてください!

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