こんにちは!しょーてぃーです!
今回は一穂ミチさんの「スモールワールズ」について紹介します。
本書の印象に残った部分や感想を記載していきます。
本書をおすすめしたい人
・本屋大賞2022にノミネートした作品を読みたい方
・直木賞の候補作に挙がった作品を読みたい方
・短編集がお好きな方
本作は、「本屋大賞2022ノミネート」「第165回直木賞受賞」以外にも
「第9回静岡書店大賞受賞」「キノベス!2022 第4位」といった
あらゆるところで取り上げられています。
そんな話題作についての感想を書いていきます!
「スモールワールズ」について
あらすじ
本作は6話をおさめた短編集です。
以下にそれぞれの物語の大まかなあらすじを記載します。
6話とも、読み手を非常に考えさせる物語となっています。
第1話「ネオンテトラ」
夫との関係に憂鬱を感じる一方で、不妊に悩むモデルの美和が
家庭環境に恵まれない一人の中学生と出会います。
美和は自分で飼っているペットの熱帯魚と
孤独な中学生の姿を重ねながら、二人が謎の関係に発展していきます・・・
第2話「魔王の帰還」
体格は良いのにすごくビビりな高校生の鉄二の日常はある日突然狂わされます。
それは、体格も性格も豪快な姉が「離婚する」と言って実家に戻ってきたのです。
無茶苦茶な姉と一緒にクラスで浮いている同級生の少女と奇妙な交流を始めていき、
姉の離婚理由と、鉄二と同級生の少女が浮いている理由が発覚していくのですが・・
第3話「ピクニック」
幸せな夫婦の間に生まれた
生後10ヶ月の赤ちゃんが不慮の事故で亡くなります。
そんな事件をきっかけに恐ろしい疑惑が上がってきます。
「事件ではなくて殺人なのでは?」
そんな可能性が出てくる中で、衝撃のラストになっています。
第4話「花うた」
兄を殺されて、天涯孤独の身となった深雪は、
ある日思い立って刑務所に入っている兄を殺した加害者宛に、一通の手紙を送ります。
被害者の親族と加害者の手紙のやりとりがもたらす、
罪と反省と生き方についての物語になっています。
第5話「愛の適量」
冴えないひとり暮らしを続けている中年の高校教師の慎悟。
そんな彼のもとに、別れた妻と暮らしていたはずの娘の佳澄がやってきます。
しかし、娘の佳澄がなぜか男になっていたのです。
佳澄に「しばらく置いてほしい」と頼まれた慎悟は、断る理由もなかったので
2人の不思議な共同生活が始まります。
佳澄にくたびれた生活を指摘された中で
自炊を勧められると、慎悟は「適量が分からない」と答えます。
慎吾は、調味料だけでなく、
学校での振る舞いや、家族との接し方などで
昔から「適量」が分からない人生を送っていたのです・・・
第6話「式日」
高校時代の後輩から
「父親が死んで、葬式に来てくれないか」と連絡がきます。
葬儀へ向かう途中に後輩との出会いを思い出します。
夜間学校の授業中に、昼間の時間帯に通っている後輩が、
教室に辞書を取りにきたところから交流は始まります。
同じ机を昼と夜で共有していたので
後輩と紙切れのメモで交流し、やがて休みの日に会うようになりました。
後輩の父が死んだ原因は「飛び降り」だと言いますが、
死因から過去の後輩とのやりとりを思い出します。
そして後輩と連絡を取らなくなったこと、わだかまりが生まれてしまった原因が
後輩が意を決してしたある告白によって明らかになります。
6話とも世界観が違う
あらすじで記載した通り
6話の物語はそれぞれ世界観が違います。
各物語の世界観が異なるので、違った味わいで楽しめます。
また、世界観が異なるのに
どの物語にも、いろいろな面白さを味わえます。
感動的な内容から、ホラー的な内容や
考えさせられる内容まで入っているので、楽しみ方が豊富な1冊です。
それでも共通する部分
6話全てを読み終えて、様々な世界観を感じたのですが
共通している部分もありました。
それは、家族とそこに潜む苦悩や秘密にまつわる物語であるということです。
各物語の登場人物同士は緩やかな繫がりを持っています。
緩やかな繋がりは、決して他人からは知られない小さな世界を作ります。
それぞれの小さな世界が集まって、世の中ができているのだと感じさせられます。
そんな意味合いも兼ねて
本作のタイトルは「スモールワールズ」なのかな?と感じてしまいました。
決して良い話では終わらない面白さ
本書を通じて感じたこととしては
「人生は思い通りにいかないこと」と「それでも人生は続く」という確固たる事実です。
取返しのつかないことをしても、大切な人を失っても
罪を背負っても、人は生きていくということです。
ただ、「それでもいい」と思わせてくれます。
どの物語も単純な「良い話」では終わらないです。
単純に泣かせようとしているわけでもなく、読み手の心を温めようともしていません。
それでも絶望はないのです。
無理矢理にでも希望を持たせようとするよりも、
「絶望させない」ことのほうが、救いになって、慰めになるということです。
本作は、それを改めて感じさせてくれる短篇集です。
最後に
ここまで本書を紹介してきました。
話題作になるだけの良書だなと感じてしまいました。
短編集ながら、1冊を通じてぐっと突き刺さるものがありました。
もし本書が気になられた方は、手に取ってみてください!
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