こんにちは!しょーてぃーです!
今回は、凪良ゆうさんの
『流浪の月』について紹介をしていきます!
『流浪の月』について
本書の概要
本書は2020年本屋大賞受賞作です。
また、2022年5月13日に映画化 が決定している
大ベストセラー小説になります。
本書をオススメしたい人
・映画化される作品が気になる人
・考えさせられる作品が好きな人
・ヒューマンドラマが好きな人
常識や世間体を抜きにして「その人と一緒にいたい」と
理屈なしの純粋な人間関係が描かれています。
家族でも友達でも
恋人でも体の関係もない男と女の物語。
2人の関係は「加害者」と「被害者」ということになりますが
当事者以外はほとんどこの関係を理解しません。
何も分からない外部の人間が
「間違っている」と否定してくるため
主人公の更紗の立場で読むと
非常に息苦しさを感じます。
逆境すら乗り越えて
一緒にいたいと願う気持ちは何より強く
息苦しさを感じている人には
寄り添ってくれる物語です。
事実は真実は異なることを
考えさせられる物語であり
「ひとりで生きる」ことについて
強いメッセージ性を感じる作品です。
『流浪の月』のあらすじ
ネタバレのないあらすじ
最初にお父さんがいなくなって、次にお母さんもいなくなって、
わたしの幸福な日々は終わりを告げた。
すこしずつ心が死んでいくわたしに居場所をくれたのが文だった。
それがどのような結末を迎えるかも知らないままに――。
だから十五年の時を経て彼と再会を果たし、わたしは再び願った。
この願いを、きっと誰もが認めないだろう。周囲のひとびとの善意を打ち捨て、
あるいは大切なひとさえも傷付けることになるかもしれない。
それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。
引用元:「流浪の月」
本書の登場人物
- 家内更紗・・・9歳の時に誘拐事件の被害者となる。現在24歳。
- 佐伯文・・・19歳のときに更紗の誘拐犯として逮捕される。中世的な容姿である。
- 中瀬亮・・・更紗の恋人で営業マン。実家は山梨の甲府で農家を営む。
- 安西佳菜子・・・更紗のアルバイト先の同僚。
- 梨花・・・安西の一人娘。8歳。
ネタバレを含むあらすじ
以下はネタバレを含むあらすじになります。
誘拐事件と快適な生活
更紗は両親のことが大好きで
笑顔の絶えない幸せが
ずっと続くと思っていました。
しかし、小学校4年生の時
おばさんの家で「厄介者」となっていました。
1年前にお父さんが病気で亡くなり
1人で生きて行けなくなったお母さんは
何人目かの恋人と出ていったきり戻って来ません。
おばさんの元に引き取られた更紗でしたが
普通を押し付ける伯母夫婦と
いやらしいことをしてくる
従兄弟の孝之がいる家庭に馴染めません。
そんなある日、学校の帰りに友達と立ち寄る公園に
いつも若い男がいて、ベンチに座って小学生の女の子が
遊んでいるのを黙って見ていました。
周りは「ロリコン」だから気を付けろと
言っていましたが、家に帰りたくない更紗は
みんなとバイバイしたあとに
1人で公園に戻り
若い男性と向かい合わせのベンチに座って過ごしました。
急に雨が降ってきて、雨に濡れながら
「おばさんの家には帰りたくない」と固まっていると
男性から「帰らないの?」と声をかけられました。
「帰りたくない」「うちにくる?」「いく」の会話だけで
更紗は男性の家について行きました。
男性の名前は佐伯文(ふみ)で19歳の大学生です。
文の家は更紗にとって
夜ご飯にアイスクリームを食べても
好きなDVDも見ても
何もしなくてぐうたらしても
文句を一切言われない
とても居心地のいい場所でした。
一方、教育熱心で
育児書通りに育てられた文にとっても
更紗の奔放さは新鮮で
お互いに楽しいひとときを過ごしていました。
1週間も経てば
更紗が行方不明になっているニュースが
メディアで出てきました。
文は「いつでも帰っていいよ」と言いましたが
更紗はようやく手に入れた
心穏やかな日々を捨てたくないので
文の部屋に残り続けました。
そんな生活をして数か月たった頃
パンダが見たいと言う更紗を
文は動物園に連れて行きました。
しかし、その動物園で
更沙と一緒にいた文は通報されてしまい
誘拐犯として捕まります。
更紗は「文は何もしていない」と訴えますが
どの大人も「怖かったね」と言い
本当の気持ちを理解してくれませんでした。
伯母の家に戻った更沙でしたが
孝弘がわいせつ行為をしようと部屋に入ってきました。
更沙は咄嗟に
近くにあった花瓶で孝弘を殴り
「誘拐により情緒不安定」という診断を受けて
養護施設で高校まで過ごすことになりました。
突然の再会
事件から15年が経ち24才になった更紗は
交際している中瀬亮と一緒に暮らしていました。
結婚の話も出ていましたが
更紗は亮と結婚したいと思っておらず
孝弘からの行為で体を重ねることに抵抗がありました。
亮はもちろん「家内更紗ちゃん誘拐事件」を知っていて
更紗のことを「かわいそう」と勝手に思っていました。
ネットでは今でも事件のことは残っていて
更紗も文も容赦なく個人情報はさらされており
文が逮捕されたときの映像まで見ることができます。
世間では異常な大学生とかわいそうな女の子という
本人達とは違った認識をされます。
そんなある日
バイト先の同僚と入ったでカフェ『calico』で
「いらっしゃいませ」という声を聞いた更沙は
その人物が文であることに気付きます。
誤解とのギャップ
それ以来更紗は亮に残業だと嘘をついて
仕事終わりに文に会いたい一心で
『calico』に通うようになります。
そこで分かったことは
文には大人の女性の恋人がいることでした。
更沙は、ロリコンだった文が
大人の女性を愛せるようになったことを知り
「文が幸せになっていて良かった。」と安堵します。
しかし、いつものように
お店のキッチンが見えるソファに座っていると
そこに亮が現れました。
亮は更紗の浮気を疑っており
更紗のバイト先にシフトを尋ねたり
頻繁に連絡をしてくるようになっていました。
そして亮は更紗に対してDVを行い
血だらけになった更沙の服をめくりあげました。
更沙は幼少期に孝弘からされた行為が
フラッシュバックして
花瓶で亮の頭を殴りつけて家を飛び出します。
逃げるように「今夜は帰りません」と亮にメールを送り
閉店後の『calico』の下で待っていると
文が女性を伴って出てきました。
更紗は思わず「わたしを覚えてる?」と
文に声をかけましたが
文は「最近、よく店にきてくれますね」と
当たり障りのない返事をしたのみでした。
ネットカフェで少し寝て
そのまま出勤した更紗を
亮が職場の出入り口で待ち構えていました。
押し問答をしていると
亮の携帯電話に祖母が倒れたと電話がありました。
亮に懇願され一緒に
甲府にある亮の実家に行くことになりました。
更紗の腕にあるアザを見て
亮のいとこの泉が
「亮くんにはDV癖がある」と言いました。
更に亮の前の彼女は
病院に運ばれたことがあり
亮の父親のDVが原因で
両親が離婚したのことを語りました。
亮の心にも傷があることを知った更紗は
亮と一緒に生きていくことを決意し
『calico』には行くのをやめました。
亮からの逃亡
亮への決意はありましたが
亮からの束縛はさらに激しくなり
更紗は亮と別れる決心をしました。
そして、バイト仲間の安西加菜子に頼んで
夜逃げを手伝う引っ越し業者を手配してもらい
亮と暮らしていた部屋を出ました。
ですが、更紗が引っ越した先は
文の住むマンションの隣の部屋でした。
文自身も更紗が
隣に引っ越して来たことに気付いていました。
そんななか、更紗は文に
「大人の女性を好きになることができたんだね。」と
それとなく恋人について言いました。
しかし文は
「俺は昔と変わらず、彼女とは繋がれない。
谷さん(現在の彼女)とは別れた方がいいと思っている」と答えました。
てっきり文が幸せだと思っていた更沙にとって
文の告白は辛く、少女で亡くなった自分に
文を救えないと思い、と悲しくなりました。
さらに文は、刑期を終えた後も実家の離れに監禁され
常に監視された状態で過ごしていました。
更紗と同じように文も
事件から15年間は苦しい時間でした。
世間からの疑惑
更紗は店長に呼ばれて
スタッフルームに行くと、1冊の週刊誌を渡されました。
そこには『いまだ終わらない家内更紗ちゃん誘拐事件』と
現在の文と更紗の様子が写真入りで書かれていました。
翌週には、明らかに亮が
話したであろう記事が掲載されました。
とあることから
更紗と文は警察に呼ばれ、取り調べを受けます。
文は再び精神的なダメージを負い
事実を知った谷さんは
文のことが受け入れられないと去りました。
「文とずっと一緒にいたいから、
文がいくところに、わたしもついていく」と
更紗が言うと、文が自分のことを話し始めました。
文の真実
文の体は大人に成長しない病気でした。
中学生になって周りに現れてくる体の変化が
文には訪れませんでした。
不安でしたが、文の母親は
正しい方法で、正しい育児をしており
普通ではないことを受け入れられないと思い
文は自分の体の異状を
打ち明けられませんでした。
大学受験に失敗し
家から出て一人になっても
青春を謳歌する周囲に馴染めず
1人になることが多かったのです。
公園で出会った少女の更紗は
普通から脱落した自分と同じにおいがして
文は更紗に声をかけたのです。
更紗は自由で
文の肩にのしかかっていた荷物を
乱暴に投げ捨てました。
警察に逮捕され、身体検査で予想通りの病名が告げられ、
文は医療少年院に送られました。
治療を受けられることにはなりましたが
20歳になろうとする文には手遅れで
ほとんど効果がありませんでした。
医療少年院を出ると
自宅の離れで半ば監禁状態でしたが
母親が倒れて、兄家族が同居することになると
いくらかの財産を生前贈与され
家を追い出されることになりました。
そして、インターネットで更紗の情報を見つけると
文は更紗と同じ土地に住むことを決意し
「更紗」という意味の『calico』というカフェを開きました。
自分のせいで
人生を変えられてしまった更紗が
今さら許してくれるとは思いませんでしたが
どこかに更紗がいると思えるだけで文は満足でした。
更紗の真実
文の告白を聞いて、更紗は
はっきりとわかったことがありました。
更紗は文に恋をしてないこと。
キスも抱き合うことも望まないこと。
けれど誰よりも文と一緒にいたいこと。
更紗と文の関係を表す言葉は何もなく
一緒にいてはいけない理由は山ほどあります。
それでも、更紗は文と一緒にいることを選びました。
文さえいれば、もう何も怖いものはないと思えるのでした。
2人のその後
文と更紗は、2人で日本の各地を転々としていました。
2人の過去がばれると嫌がらせを受けるので
そんなときは何の躊躇もなく住むところを変えました。
現在は2人で
長崎にカフェを開いています。
「今の場所にいられなくなったら今度はどこに行きたい?」と
更紗はいつも明るく文に聞きます。
文は「どこにでもついていくよ」と答えました。
『流浪の月』の感想
ものすごく考えさせられる物語
真実と事実は違うことが
当たり前であることは分かっていても
非常にこれについて考えさせる物語です。
真実は当事者しかわからないのに
周囲が勝手に判断し、議論することの無意味さや
加害者でも被害者でも
個人情報が丸裸にされてしまう恐怖を非常に感じました。
この上ないもどかしさ
本書は感情移入が非常にしやすい物語です。
更紗がどれだけ説明しても
誰からも理解されずに、状況は悪化していきます。
理解してもらえないもどかしさが
リアルで、ついつい苦しさを自分も感じました。
相手をこの上なく受け入れること
本書の文と更紗の関係は
不健全に見えてしまいます。
それでもお互いが相手を思い
それぞれの意思を尊重することの
素晴らしさを非常に感じます、
生涯に渡って
周囲からの納得が得られなくても
お互いのことをこれ以上なく
思いやれる関係になれる人と出会うことが
何よりの幸せなのかなと感じました。
最後に
ここまで本書について紹介してきました。
デジタルタトゥーの怖さや
事実と真実の違い
周囲の勝手な解釈など
非常に考えさせられる作品でした。
そして本屋大賞の受賞だけでなく
映画化まで決定するほどの作品だなと
改めて納得してしまうほどの良作です。
本書が気になる方は
是非手に取ってみてください!
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