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『八月の母』のあらすじと感想について

小説

こんにちは!しょーてぃーです!

今回は、早見和真さんの

『八月の母』について紹介をしていきます!

 

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『八月の母』について 

本書の概要

本書は、『イノセント・デイズ」の著者である

早見和真さんが

愛媛県伊予市を舞台にとした

母性、親子愛、家族愛について

深く描かれた長編作品です。

  

本書をオススメしたい人

・早見和真さんが好きな人

・衝撃的な作品が好きな人

・考えさせられる作品が好きな人

 

本書は2014年に起きた

伊予市事件をメインテーマとして描かれた作品です。

 

事件の残虐さだけでなく

母性や家族について書かれた本書には

数々の著名人からコメントがあります。

 

長い間歪み続けた愛や母性の歴史、地層のように積み重なる闇に確かな兆しを探し続けた。神が人を嘲笑い続けてきたのか。人が神を嘲笑い続けてきたのか。神なるものへの幻想と呪縛を解き放つ祈りとその熱に、心が深く確かに蠢いた。

──池松壮亮(俳優)

容赦などまるでない。「母」にこだわる作家が、母という絶対性に対峙した。確かなものなど何ひとつない世の中で、早見和真は正しい光を見つけようとしている。その試みには、当然異様な熱が帯びる。

──石井裕也(映画監督)

私も命を繋いでいく役目を担うのだろうか。微かな光と絶望に怯えながら、夢中で読み進めた。どうしようもない日々に、早見さんはいつだって、隣で一緒に座り込んでくれるんだ。

──長濱ねる(タレント)

ラストに現れるヒロインの強い覚悟と意思の力に、私たちは元気づけられる。辛く暗く苦しい話だが、そういう発見があるかぎり、小説はまだまだ捨てたものではない。(「カドブン」書評より抜粋)

── 北上次郎(書評家)

引用元:カドブン「八月の母」 

 

少しずつ堕ちていく登場人物たちと

何がいけなかったのか?どこで間違えた?と

読者を非常に考えさせる作品です。

 

『八月の母』のあらすじ

あらすじの概要

彼女たちは、蟻地獄の中で、必死にもがいていた。

愛媛県伊予市。越智エリカは海に面したこの街から「いつか必ず出ていきたい」と願っていた。しかしその機会が訪れようとするたび、スナックを経営する母・美智子が目の前に立ち塞がった。そして、自らも予期せず最愛の娘を授かるが──。

うだるような暑さだった八月。あの日、あの団地の一室で何が起きたのか。執着、嫉妬、怒り、焦り……。人間の内に秘められた負の感情が一気にむき出しになっていく。強烈な愛と憎しみで結ばれた母と娘の長く狂おしい物語。ここにあるのは、かつて見たことのない絶望か、希望か──。

引用元:KADOKAWA公式サイト『八月の母』

 

ネタバレを含むあらすじ

1970年代に愛媛県の小さな街で生まれた

越智美智子にとって

家は憂鬱な場所でした。

 

自分の正しさと凄さをしつこく家族に言う父親や

それに加勢する祖母と

主体性が全くなく

何を考えているか分からない母と

過ごす日々は苦しさしかありません。

 

ですが、そんな暮らしも

父親がガンになったことで一変します。

 

入院を繰り返した父親が死ぬと

母は前から不倫していた男のもとへ行こうとします。

 

置いていかれたくないと思った美智子は

必死にお願いをして

母の不倫相手と3人で松山に行きます。

 

しかし、その生活はたった半年で終わり

美智子は母が別に関係を持っていた

矢野という男と3人で暮らし始めます。

 

新生活が始まると

母は矢野に嫌われないために媚びて

母親よりも女であろうとしました。

 

ですが、矢野の欲望は美智子に向き

少しずつ体を求められるようになります。

 

しかし母は守るどころか

美智子に嫉妬して、矢野に溺れ続けます。

 

そんな日々で、美智子の中で

母への不信感が怒りに変わり

矢野と関係を持ち続けることで母を見下し

男をコントロールすることを覚えます。

 

その後、母はスナック「ミチコ」をオープンします。

 

店名が自分の名前と同じであることを

クラスメイトにからかわれた美智子は

これを機に家出します。

 

自分を幸せにしてくれるのは

お金だけだと思って、体を売り

東京で暮らすために貯金をし始めます。

 

目標金額に達した20歳になった頃

久しぶりに実家へ行くと

そこには男に捨てられ

老婆のような母の姿がありました。

 

泣きながらこれまでのことを

謝罪する母を見た美智子は

これで最後と思い、数万円を手渡します。

 

しかし美智子は

母に貯金を持ち逃げされ

手元には、謝罪の手紙と

母が置いていった5万円のみが残っていました。

 

それから美智子は

自分でスナックを営業して女の子を出産します。

エリカと名付け

幸せにしていこうと心に誓います。

 

しかし、美智子は母の呪縛から

抜け出せませんでした。

 

エリカが目にしたのは

自分を最優先して

男と金にだらしない美智子でした。

 

海に面したこの街から、いつか必ず出ていきたいと

エリカは重い続けますが

チャンスが訪れるごとに母が立ちふさがります。

 

見えない鎖を断ち切れずにいた中

そんな呪縛が、ある年の8月に

残酷な事件を引き起こします。

 

『八月の母』の感想

ここからは、ネタバレを含んだ感想になります。

 

ヒロインの立派さに脱帽!

誰が悪くて、なにがだめなのかを

ハッキリとわからないのが

本書の最大の魅力です。

 

そして本書は先の展開が

まったく読めない物語です。

 

そして何が起きたのかを

最後まで明かされません。

 

プロローグに登場する女性が誰かを

明らかにせずに物語が始まります。

 

途中に何度も

この女性の現在が描かれますが

本当に誰かわかりません。

 

本書は2部構成となっています。

 

第1部は、親の愛に恵まれない美智子の

波乱な人生が描かれます。

 

信じられる大人がいない孤独さに

読者は胸が痛くなります。

 

さまざまなことがあり

物語の主役は、美智子から娘のエリカに変わり

友達のいないエリカの少女時代の話です。

 

第1部の最後は

22歳になったエリカの

働いているバーに博司が来て

二人の関係が始まります。

 

博司の視点から物語が描かれていて

少女時代から22歳までののエリカに

何があったのかはすぐに明らかにされません。

 

そしてラストは

エリカの本当の姿に対して

ついつい驚き、戸惑ってしまう展開です。

 

第2部は、第1部の衝撃から

10年ほど経った物語です。

 

そして伊予市事件のような

悲惨な事件が起こる展開まで描かれます。

 

ページが進むにつれて

エスカレートしていき

救いのない世界までまで描かれます。

 

ラストではすべてが明らかになり

この展開が読者を唸らせます。

 

そして自力で生きることの逞しさに

強く心を打たれます。

 

ラストに現れるヒロインの

強い覚悟と意思の力に元気が付けられます。

 

物語を通して

辛くて苦しい物話ですが

親子愛・家族愛について

非常に考えさせられる物語です。

 

愛媛に住んだからこそ描ける作品

本書は2014年に

愛媛県伊予市に立つ市営団地の一室から

激しい暴行のあとが残る少女の遺体が

見つかった事件に近い長編作です。

 

著者の早見さんは

伊予市事件から2年経った2016年から

愛媛に住んでいます。

 

僕が愛媛に引っ越したのは、その事件が起こった2年後の2016年でした。町の人たちにとってはまだ記憶が色褪せていない時期であり、僕が『イノセント・デイズ』を書いた作家だと知った何人かの方から「あの事件を知っている?」と聞かれました。僕は当時、事件そのものを知らなかったのですが、興味が湧いて調べたんです。しかしあまりにも凄惨で救いがなさ過ぎて、小説として何を書いていいのかわからない事件だなと思考が停止してしまいました。

愛媛には6年間だけ住むと最初から決めていて、3年ほど経ったころから愛媛に何を残していけるのかをずっと考えていました。1つは『かなしきデブ猫ちゃん』ではあったのですが、これだけではないなという気持ちがあって、もう一度この事件に立ち返りました。

引用元:ほんのひきだしインタビュー

 

愛媛に住んだからこそ

作家として事件に向き合う責任感から

このような素晴らしい物語が

生まれたんだなと感じました。

 

最後に

ここまで本書について紹介してきました。

 

『イノセントデイズ』と同様で

ものすごく読者を考えさせる作品です。

 

先の読めない展開にドキドキしたり

ヒステリックな展開が

本書の魅力です!

 

本書が気になる方は

是非手に取ってみてください!

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